今月の大ちゃんニュース

こんにちは!中嶌会計事務所です。
今回の大ちゃんニュースは税制改正の流れとふるさと納税の改正についてお伝えします。


◆ 税制改正の流れについて
 4月1日から平成31年度の税制改正を踏まえた新税制が施行となりましたが、そもそも新税制が施行となるまでにはどのような過程があるのでしょうか?

大まかには、下記1.〜4.のような流れとなります。

1.毎年夏頃までに各省庁から「税制改正要望」が提出。
2.12月頃に与党から「税制改正大綱」が発表。
3.2月頃に「税制改正法案」が国会に提出。
4.そして最後に審議・採択等を経て4月から「改正法案」が実際に施行。

では、今年度の税制改正につきまして、個人課税を中心にトピックス性の高いものをご紹介します。

@ 個人所得税
 ・ふるさと納税制度の見直し
 ・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の特例の創設

A 資産課税
 ・特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し
 ・個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の創設
 ・教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し

B 消費課税
 ・車体課税等の見直し
 ・外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し


なかなか盛りだくさんな内容ですね。
今後大ちゃんニュースでもしっかりと取り上げることとして、今回はこの中からふるさと納税制度の見直しについて紹介させて頂きます。

◆ ふるさと納税とは・・?
 聞いたことはあるが実際にはやったことがないという方もおられるのではないでしょうか?
ふるさと納税とは寄附金控除の一種です。寄附金控除は国・地方公共団体等に寄付をすることで一定の金額を寄付をした者の所得から控除する、という制度です。



つまり、ふるさと納税についても寄付金限度額までの寄付を各自治体に行うことで、所得税及び住民税について一定の控除を受けることができ、それに加えて自治体からお礼の品(以下「返礼品」という。)をもらうことができます。

例えば、10,000円の寄付を行うと所得税と住民税が8,000円減少し、さらに自治体から返礼品を受け取ることができます(実質2,000円で返礼品を購入したのと同じ効果が得られます。)
ふるさと納税の適用を受けるためには、原則として所得税の確定申告を行う必要があります。
確定申告書を税務署に提出すると、税務署が納税者の住所地の市役所等に申告情報を提供し、その市役所などが住民税の計算を行います。
その結果、ふるさと納税の効果分の所得税と翌年度分の住民税が減額されるという仕組みです。



また、寄付先の自治体が5団体以下の場合は確定申告を行う必要が無く、ワンストップ特例制度の適用を受けることができます。
ワンストップ特例とは、確定申告を行わずにふるさと納税を行った各自治体のホームページからワンストップ特例申告書を印刷し、その自治体に提出するだけでふるさと納税の税制面の優遇措置を受けることができる制度をいいます。
なお、確定申告を行っていないため、所得税の減額はなく、住民税のみ減額されることとなります。(減額金額は確定申告を行った場合と同じことになります。)



・寄付金限度額はどうやって調べることができるの?
 給与所得のみの方(サラリーマン等)につきましては前年の源泉徴収票を参考に「さとふる」や「ふるさとチョイス」等のふるさと納税サイトホームページから簡単に寄付金限度額の目安を計算する事が出来ます。

・いつまでに寄付を行えばいいの?
 1月1日から12月31日までの間に行った各自治体に対する寄附金の合計額が、寄附金控除の対象となります。

上記の点から、近年注目を集めているふるさと納税の制度ですが、本来の寄付という目的から外れ、各自治体が豪華な返礼品を用意して寄付金を集める競争が激化していました。
このような経緯から、以下の点について改正されることが決定しました。

(1) 総務大臣は以下の基準に適合する都道府県等をふるさと納税の
  対象として指定する。
 (イ)寄付金の募集を適正に実施する都道府県等
 (ロ)(イ)の都道府県等で返礼品を送付する場合には、以下のいず
   れも満たす都道府県等
  イ.返礼品の返礼割合を3割以下とする事。
  ロ.返礼品を地産品とすること。
(2) その他
 (イ)(1)の基準は総務大臣が定める。
 (ロ)指定は都道府県等の申し出により行う。
 (ハ)総務大臣は指定をした都道府県等が基準に適合しなくなった   と認める場合等には、指定を取り消すことができる。
 (ニ)総務大臣は指定をし、又は指定を取り消したときは直ちにその  旨を告示しなければならない。
 (ホ)基準の制定や改廃、指定や指定の取消しについては、地方財政
審議会の意見を聴かなければならない。
 (ヘ)その他所要の措置を講ずる。


 簡単にまとめますと、返礼品を地産品(商品券などはダメ。)とし、返礼割合を3割以下にして下さいという事です。

 ここで問題となるのが、上記の点を満たさないもの(総務大臣の指定が受けられなかったもの)についてはふるさと納税の対象から外れることになります。
つまり、一定の自治体に寄付を行っても、税制面での優遇措置の適用は受けることができず、返礼品を高い価額で購入しただけという事になります。

なお、改正適用時期は令和元年6月1日以後に支出された寄附金について適用されます。

また、今回の改正とは直接関係がありませんが、高額のふるさと納税を行う方(ふるさと納税の返礼品の金額が年間50万円を超える場合)につきましては、所得税(一時所得)が生じるため注意が必要です。
なお、返礼品の金額がわからない場合が多いため、以下のような方法を参考にして下さい。
・ネットショップで似たような商品の値段を調べる。
・寄付金額×返礼率

一時所得として算出された金額の1/2相当額が給与所得等の他の所得の金額と合計されて、所得税が計算されます。
つまり、ふるさと納税の返礼品が50万円を超える場合に所得税の計算に含めていない場合には所得税の課税漏れが発生してしまうため、注意が必要となります。

 いかがだったでしょうか?ふるさと納税の返礼品競争も少し落ち着きそうですね。お得感は少し薄くなりそうですが、まだふるさと納税をやったことがない方は是非チャレンジしてみてくださいね。
ふるさと納税のための確定申告のご要望がありましたら、中嶌会計までご連絡をお待ちしております!

<参考URL>
【ふるさとチョイス】
https://www.furusato-tax.jp/
【さとふる】
https://www.satofull.jp/

こんにちは!中嶌会計事務所です。今年も早いもので、12月となりました。
なにかと忙しい年末、もうすぐ寒波もやってくるようです。
体調管理をしっかりと行い、気持ちよく年を越す準備をしておきましょう。
 今月の大ちゃんニュースのテーマはタイムリーな話題となりますが、『年末調整の注意点(配偶者控除等申告書の様式変更について)』となります。

◆ 今年の年末調整の注意点
 まず、今年は配偶者控除等の改正に伴って下記の3点に注意が必要となります。
・「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に分かれました。
・配偶者控除の適用を受けるにあたっては、「配偶者控除等申告書」の提出が必要となります。(配偶者がいる場合には必ず提出しましょう。)
・新しくなった「配偶者控除等申告書」には給与所得者本人とその配偶者の所得の見積額と、所得の区分判定を記載します。
では、上記の注意点についてもう少し詳細を確認していきましょう。

◆ 「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」が「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」の2枚に
 様式の変更に伴い、従来の「配偶者特別控除申告書」が廃止となり、新たに「配偶者控除等申告書」が設けられ、配偶者控除・配偶者特別控除額を算出できる様式に変更となりました。図解で説明するのであれば下図のようなイメージとなります。



◆ 配偶者控除の適用を受けるにあたっては、「配偶者控除等申告書」の提出が必要に
 昨年までは配偶者特別控除を受ける場合にのみ、「配偶者特別控除申告書」の記載が必要でしたが、今年からは配偶者控除又は配偶者特別控除のいずれかを受ける場合には、「配偶者控除等申告書」の記載及び提出が必要となります。

◆ 新しくなった「配偶者控除等申告書」には給与所得者本人とその配偶者の所得の見積額と、所得の区分判定を記載
 ここでは実際の「配偶者控除等申告書」の様式を使って、書き方やポイントを説明していきましょう。
保険料控除申告書については例年と同様の記載方法となりますので書き方については割愛させて頂きます。



@ あなたの本年中の合計所得金額の見積額について
 ここでは自分自身の本年中の合計所得金額の見積額を記載します。その際、B(合計所得金額の見積額の計算欄)の左側の欄を使用し、合計所得金額の見積額を計算してください。
注意点としては、収入金額と所得金額について理解をしておく必要があります。
収入金額は※1(a欄)に記載しますが、金額としては「源泉徴収票の支払い金額」を記入します。直近の源泉徴収票や給与明細書を参考にして金額を見積もるのが良いでしょう。
また所得金額は※2(c欄)に記載します。所得金額とは収入金額から給与所得控除額を控除した金額をいい、配偶者控除等申告書の裏面「3 所得の区分」の【@給与所得】を参考に計算した金額を記入してください。記入が終わり、合計額の記載ができれば、その金額を@の一番左の欄に転記し、その金額を基に区分を判定しましょう。
ちなみに、所得金額の上限は1,000万円となっており、1,000万円を超える場合はその時点で配偶者控除の適用はありませんので、注意が必要です。

A 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額について
 この部分には配偶者の本年中の合計所得金額の見積額を記載します。B(合計所得金額の見積額の計算欄)の右側の欄を使用し、合計所得金額の見積額を計算してください。
記入にあたっては、配偶者の本年中の収入金額が必要となりますので、大まかな金額を事前に確認しておきましょう。
ここでも@と同様に収入金額を(a欄)に、所得金額を(c欄)に記載し、合計額をAへと転記します。また、@と同様に転記した金額を基として所得金額を判定してください。
注意点としては、大きく2点です。
一つ目は配偶者の所得がない場合には収入欄及び所得欄に必ず「0」と記載すること。この記載がければ経理の担当者は記載を忘れているのか、所得がないのかの区別がつかなくなってしまいます。二つ目は所得金額が38万円以下の場合は配偶者の年齢が70歳以上か未満かによって区分が変わることです。この部分については配偶者控除等申告書を慎重に読めば、間違えることはないでしょう。

C 控除額の計算について
 区分の判定ができたら、C欄の控除額の計算欄にて配偶者控除額又は配偶者特別控除額を算出していきます。左側の区分Tがあなたの所得の区分で、上側の区分Uが配偶者の所得の区分で、交差するところが配偶者控除額又は配偶者特別控除額となります。
 例えば、夫の所得が350万円(区分TはA)で配偶者の所得が100万円(区分UはC、95万円超100万円以下)であれば、配偶者特別控除として26万円の控除が受けられることとなります。

D 控除額を記載
 C欄に従って算出した配偶者控除額又は配偶者特別控除額を転記します。

 以上で配偶者控除等申告書の記載は終了となります。

◆最後に
 いかがだったでしょうか?
今年から初めて配偶者控除等申告書が導入され、どのように記載していいかわからなかった方もおられたのではないでしょうか?配偶者控除等申告書の提出がないと、配偶者控除又は配偶者特別控除の適用が受けられなくなるため、年末調整による還付金が少なくなってしまう恐れもありますので、配偶者のおられる方については必ず提出してくださいね。(もちろん、自分で確定申告します。という方については必ずしも提出する必要はありません。)また、配偶者の合計所得金額の見積金額についてはあくまでも見積もりですので、実際には金額が上下するケースがあります。従って、実際の配偶者の源泉徴収票を確認して、見積額が実際の給与所得よりも大きかった場合には確定申告をすることで還付される金額が発生するかもしれませんし、逆に配偶者の所得を少なく見積もっていた場合には扶養是正の対象となり税金を徴収される可能性があります。
 配偶者控除等申告書に限らず、年末調整の資料の記載方法がわからない方、それに付随するご質問のある方は中嶌会計事務所までお気軽にご相談ください!

 こんにちは!中嶌会計事務所です。昨日は台風21号が猛威を振るいましたが、大丈夫だったでしょうか?被災された方々には心からお見舞い申しあげると共に復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈りいたします。
 今月の大ちゃんニュースのテーマは『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小宅の特例」という。)の改正』について。の第2弾となります。
前回の記事で小宅の特例の大きな概要については書いておりますので、まだお読みになっておられない方は見て頂くとして、今回は改正論点の2つ目、貸付事業用宅地等について内容を確認していきます。

◆貸付事業用宅地等とは(改正前の要件)
 前回の記事でも少し触れておりますが、貸付事業用宅地等とは下記の要件を満たす宅地等のことをいい、この要件を満たせば対象となる宅地等につき200uを限度として相続税評価額の50%の減額が受けられることとなります。


 改正前の貸付事業用宅地等については相続開始前に地価の高い賃貸不動産を購入して一時的に現金を不動産に転換し、借入を行い資産を圧縮して相続税負担を軽減(債務は相続税の計算をするうえで控除できる。)したうえで、相続税申告後すぐに売却して相続税を軽減する例が多く見受けられたという問題点があり、それが改正の一因となっているようです。

◆改正論点(適用要件の見直し)
 改正により、上記の要件はそのままに相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等が貸付事業用宅地等の範囲から除外される([1]原則)こととなりました。
 ただし、相続開始の日まで3年を超えて事業的規模による貸付事業(準事業以外のものをいう。)を行っていた被相続人が貸付事業の用に供しているものは除外されないこととされます。([2]例外)したがって、既に事業的規模による貸付事業を行っている方は見直しには該当しません。また、経過措置として、平成30年4月1日〜平成33年3月31日までに開始する相続において平成30年3月31日までに貸付を行ったものは相続開始前3年以内の貸付であっても適用対象となります。([3]経過措置)


◆事業的規模とは?
 事業的規模とありますが、具体的にどんなものが事業的規模として認められるのでしょうか?これに関しては所得税法の基本通達を根拠とするようです。


 こんにちは!中嶌会計事務所です。6月になりました。関西も梅雨入りし、すっきりしない天気の日が続いておりますが、今月も頑張って参りましょう!
 さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「小宅の特例」という。)の改正』について。
小宅の特例といえば、相続税の課税価格の減額規定として最もメジャーな規定ですが、行き過ぎた節税が多かったというのも事実。
 そういった経緯を経て、平成30年4月1日以後に相続又は贈与により取得する財産に係る相続税について改正がなされることとなりました。

そもそも小宅の特例とは
 個人が死亡した場合、その者が死亡の時点で有していた財産をその時点の価値で評価し、その評価額に対して税率を乗じることで、相続税の計算を行うこととなります。
 その場合、その者が生前に有していた家屋の敷地の用となっていた土地についてももちろん相続税の課税対象となります。
簡単な例を使って説明してみましょう。
 【例】相続税の納付税額を求めてみましょう
・死亡者(甲)
・配偶者はすでに亡くなっている
・相続人は甲と同居している子供一人(A)
・財産は居住用家屋(評価額:5,000万)、居住用家屋の土地330u(評価額:5,000万)
・Aは申告期限までに上記の宅地を相続により取得し、引き続き居住の用に供している

【解答1】(小宅の特例の適用がない場合)
(1)課税価格 5,000万+5,000万=1億
(2)基礎控除 3,000万+600万×法定相続人の数(本例においては1人)=3,600万
(3)課税遺産総額 (1)−(2)=6,400万
(4)納付税額 (3)×30%−700万=1220万

【解答2】(小宅の特例の適用がある場合)
(1)課税価格 (5,000万+5,000万)−4,000万(小宅の特例)=6,000万
(2)基礎控除 3,000万+600万×法定相続人の数(本例においては1人)=3,600万
(3)課税遺産総額 (1)−(2)=2,400万
(4)納付税額 (3)×15%−50万=310万

 上記の例から小宅の特例の適用を受けるか否かによってその減税効果が910万円にもなることがわかります。ということは小宅の特例の適用がなければAさんは多額の相続税を払えず、甲さんの死亡後居住していた土地と家屋を売却することになっていたかもしれません。
つまり、小宅の特例は『@生活基盤となっている土地をA親族に対してB相続等する場合については相続税の負担を軽減してあげよう』という趣旨で創設された規定なのです。
なお、適用を受けるための大前提は上記の番号を付した要件の通りです。
@被相続人等の事業用、居住用の宅地であること(下記に詳しい説明有)
A死亡した者と親族関係にある人が土地を取得する場合でなければ適用はありません。
B相続・遺贈での取得でのみ適用があり、贈与による取得については適用はありません。

小規模宅地等(以下「小宅」という)の種類について
 小宅はその宅地の目的に応じて4種類に区分されます。
ここではざっくりと4種類について確認していきましょう。

(※1)課税価格に下記の割合を乗じた金額が減額金額となります。(先ほどの例では目的が被相続人の居住用であった為、5,000万円の80%相当額である4,000万円が減額金額となります。)
(※2)必ずしも土地全体につき適用を受けられるわけではなく、面積につき限度が設けられています。
(※3)被相続人が土地を使用している場合に加えて、被相続人の生計一親族(被相続人と同じ財布で生活している者)が土地を使用している場合(被相続人からの使用貸借が前提)を含む。

改正の内容は?
 今回の改正の対象となったのは、特定居住用宅地等・貸付事業用宅地等になります。
ボリューム的にすべての改正の内容について触れることは難しいので、貸付事業用宅地等については次回に回すことにします。
具体的な改正についてお話する前に、適用対象者ごとの要件について触れておきましょう。
<特定居住用宅地等の適用対象者ごとの要件について>
特定居住用の特徴については既出の図解で説明したとおりですが、土地を取得した者(親族に限る)であれば誰でも適用が受けられるわけではありません。
取得者別に要件が設けられているのですが、その内容を確認していきましょう。

まず、上記の図解からわかる通り、特定居住用宅地等としての適用が受けられる可能性がある人は4種類しかいません。(配偶者、同居親族、別居親族、生計一親族)
このうち、配偶者については最も優遇されるべきである者であることから特段要件は存在せず、取得しさえすれば特定居住用宅地等の80%の減額の適用を受けられます。
ただし、それ以外の者が減額の適用を受けるためには基本的に申告期限までにその土地を相続・遺贈により取得し(※1所有要件)、かつ、居住し続けている(※2継続要件)必要があります。
なお、別居親族については最も厳しい要件が課せられており、(※3)の持ち家要件や(※4)の同居親族要件を充足しなければ適用を受けることができませんでした。(被相続人と離れて暮らしていることも想定されるため、継続要件については優遇される)
<改正の内容について>
 さて、図解からもおわかりかと思いますが、今回の改正では(※3)の持ち家要件がより厳しいものとなりました。今までは相続開始前3年以内にその者又はその者の配偶者の所有する家屋に居住したことがなければ要件がクリアとなっていたわけですが、今までの要件から一定の者が除外されることとなりました。
一定の者とは下記の通りです。
 @相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係にある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
 A相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
言い換えれば、上記のいずれかの要件に該当する者は改正前の持ち家要件を満たしていて
も改正後は別居親族として小宅の特例の適用が受けられないこととなったのです。

改正の背景
 上記の改正の背景には、本来持ち家があって別居親族として小宅の特例を受けられないはずの人が、相続開始前にその持ち家を親族などに売却・贈与等することにより「持ち家無し」となることによって適用可能な状態を意図的に作出するという事例が増加したためと言われています。

最後に
 いかがだったでしょうか?
文中でもお話したとおり、小宅の特例は相続税の課税価額を減額する有用な手立てとなりますが、本来適用を受けることのできない人が適用を受けるために意図的な行為を行うというのは行き過ぎた節税と言われてもしょうがないですね。
 相続税については改正が入ることによって規定の内容もどんどん複雑化しており、適用の有無によって税額が大きく変わってくるのも特徴です。
 自分や親族に相続が発生した時の相続税の試算はできていますか?またその対策は万全でしょうか?不安を感じる方はどんな些細なことでも結構ですので、中嶌会計事務所までお気軽にお問い合わせください!

 2018年も年が明けて、早いもので3か月が経過しました。
今年の冬は非常に寒かったように思いますが、暖かくなるのも早く、佐保川の桜も見ごろを迎えております。
今月の大ちゃんニュースのテーマは「非上場株式の納税猶予制度(新事業承継税制)」について。
従来から相続税・贈与税には事業承継に関する規定が設けられておりましたが、実際に規定を適用するにあたってはハードルが高く、現実的には使いづらいものでした。そこで、平成30年度から納税者にとってより使いやすい規定とするべく税制改正が行われることとなりました。具体的に変わったところを従来の規定の内容を踏まえて解説していきましょう!

◆ 多様な事業承継税制
 現在、我が国の税法の規定では各種事業承継規定が設けられています。
1.農地等の納税猶予(贈与税・相続税)…農業の事業承継
2.非上場株式の納税猶予(贈与税・相続税)…法人の事業承継
3.山林の納税猶予(相続税)…林業の事業承継
4.医療法人の持分についての納税猶予(相続税・贈与税)…医療法人の事業承継
もちろん業種の違いはありますが、共通する目的は『事業承継の円滑化』です。
親世代から子世代に事業(株)や財産(農地)を承継するにあたっては、得てして莫大な相続税・贈与税が課税されることとなります。
相続や贈与といった事象により、税金が事業承継を阻害することのないように事業承継税制が創設されることとなったのです。

◆ 従来の事業承継税制(非上場株式の納税猶予)との相違点
 非上場株式の納税猶予については、平成25年度の改正により抜本的な見直しがされることとなりましたが、それでもなお適用要件が厳しく使いづらい一面がありました。
そこで、今回の平成30年4月1日より現行の制度に10年間限定の特例措置が拡充され、納税者にとってより使いやすい規定へ抜本的に改正されることとなりました。
 では、下記の図を使って具体的にどのように変わったのかを従来の規定と比較して説明していきましょう。

(注1)まず、大きな変更点として、対象株式数と猶予対象となる評価額が大きく拡充されています。現行の制度では相続した株式のうち発行株式数の3分の2に達するまでの株式数が対象となり、さらにその評価額の80%が猶予される税額となっていましたが、この改正により相続した株式の全てが対象となるとともに、その評価額の100%が猶予されることになりました。つまり、実質相続や贈与で取得した株式の評価額に対する税額が全て猶予の対象となるわけです。これはかなり大きな変更点と言えるでしょう。

(注2)次に雇用確保要件ですが、従業員が少ない中小企業にとって5年平均の従業員数が80%を下回らないようにしなければならないというのは厳しいものであり、実はこの要件も現行の規定においてかなりネックになっていたようです。(因みに、要件が満たされないこととなった場合には認定が取り消され、猶予税額の全額の納付が必要となります。)特例制度においては5年平均の従業員数が80%を下回った場合でも、認定経営革新等支援機関(※)の意見が記載されている「下回った理由」を記載した書類が提出された場合には、認定の取消がされないこととなります。つまり、雇用確保要件が実質的に撤廃され、ネックとなっていた要件もクリアできることになったわけです。(※)税理士事務所など

(注3)現行の制度では、代表者であった同族関係者間で筆頭株主である先代経営者からの贈与に限られており、特例制度では先代経営者の要件はそのままに後継者となる人が代表者以外の者から取得する非上場株式についても上記(注7)の期間内に申告書の提出期限が到来するものについては、本特例の対象とされます。言い換えれば、役員になったことの無い株主でかつ親族以外の人から相続・贈与等により取得した非上場株式についても適用が受けられることとなり、相続や贈与で非上場株式を渡す側の要件が緩和されることとなります。因みに、この要件については現行の事業承継税制でも同様に改正されます。

(注4)受贈者(株を取得する者)においても、現行制度では筆頭株主である代表者に限定されますが、特例制度においては一定の計画に記載された代表権を有する後継者で、発行済総議決権数の10%以上を有する上位2名又は3名も対象となり、相続や贈与で非上場株式をもらう側の要件が緩和されることとなります。

(注5)平成29年の改正により、推定相続人又は孫である後継者について相続時精算課税制度の適用が可能となりましたが、特例制度では推定相続人や孫以外の親族や第三者であっても相続時精算課税の適用を受けて非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予の規定を受けることができるようになりました。

(注6)特例制度は、平成30年4月1日から平成35年3月31日までに都道府県知事に提出された、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けた適用を受けようとする会社が作成した計画であり、その会社の後継者や承継時までの経営見通し等が記載された特例承継計画の提出を要件として適用を受けることができます。

◆ 事業承継税制適用の大まかな流れ
 次に特例事業承継税制の適用について大まかな流れをお話します。

(1)納税猶予を受けるまで
まずは前提条件として平成30年4月1日〜平成35年3月31日までの間に税理士事務所等の認定経営革新等支援機関の指導又は助言を受けた適用対象法人が作成した特例承継計画を都道府県知事に提出することが要件となりますが、特例事業承継税制の適用を受けるにあたっての入り口は大きくわけて下記の2つです。
@先代経営者その他の者から贈与で後継者に非上場株式の贈与が行われること
A先代経営者その他の者から相続又は遺贈で後継者に非上場株式の相続が行われること

ポイントは非上場株式について贈与を行う場合には、特例承継計画を提出してから平成39年12月31日までに次期後継者に贈与を行い、代表権を譲ることです。
上記の贈与、相続等を要件とし後継者へ経営権が移行したこと等の要件が満たされると、都道府県知事より認定が受けられることとなり、晴れて納税猶予が受けられることとなります。
(2)納税猶予を受け、猶予税額につき免除を受けるまで
 納税猶予の適用を受けると非上場株式に係る贈与税・相続税の課税は猶予され、贈与者や後継者の死亡、次世代への非上場株式の一括贈与を起因として最終的にその税額は免除されることとなります。
因みに上記図解における@´のパターンは贈与税の納税猶予の適用を受け、その後贈与者が死亡し、相続税の納税猶予に切替わるパターンです。
その場合は贈与税の納税猶予税額については免除となり、贈与でもらった非上場株式を相続等で取得したものとみなし、相続税の課税対象とすることとなります。
相続税の課税対象とされた非上場株式は要件を満たしていれば相続税の納税猶予の適用が受けられることになります。
しかし、免除されるからといって何もしなくていいわけではありません。具体的にはちゃんと事業を継続して経営頑張ってます!というのを税務署長に届け出る必要があります。この届出に関しては特例承継期間内であれば毎年、特例承継期間後は3年ごとに行う必要があります。他にも、特例承継期間内に後継者が代表者でなくなる等経営状況の変更があった場合や猶予の対象となる株式を売却などすると猶予が打ち切られ、猶予税額と利子税の納付が必要となる場合もありますので注意が必要です。

◆ 最後に
 平成30年度より改正される事業承継税制いかがだったでしょうか?現在事業承継をお考えの方にとってはこの機会に是非活用をご検討頂きたい話題となりそうです。しかし、適用を受けるにあたり注意点も多く複雑な部分もあるため、まずは是非一度中嶌会計事務所までお気軽にご相談ください!

 寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
インフルエンザも流行しているようですがインフルエンザウイルスは乾燥した環境を好むようですので、室内の保湿も忘れずにしっかりと行いましょう!
今回のテーマは平成29年度の確定申告からいよいよ導入となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について。以前にも一度お伝えさせて頂きましたが、もう少し具体的な解説をさせて頂きます。

まずは以前のおさらいからしていきましょう。

◆ 医療費控除とは
 自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、年間10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額。)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる制度。 控除できる金額の上限は200万円。 ただし、保険金などで補てんされた場合はその金額を差し引かなければいけません。(※未払い医療費は含まない。)

〈計算式〉
支払った医療費−(注)100,000円=控除額(2,000,000円を限度)
(注)所得金額200万円未満の人は総所得金額×5%を限度

◆ セルフメディケーション税制とは
 健康の維持増進・疾病の予防として一定の取組を行う人が、その年に自分や家族のために購入したOTC医薬品の対価の額の合計が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(88,000円を限度とする。)を総所得金額から控除することができる制度。

〈計算式〉
支払った特定一般用医薬品の対価の額−12,000円=控除額(88,000円を限度)

◆ 医療費控除とセルフメディケーション税制との関係性について
 結局のところ、医療費控除とセルフメディケーション税制はどう違うのか、医療費控除とセルフメディケーション税制の関係について詳しく解説していきましょう。

・医療費控除とセルフメディケーション税制はいずれか選択適用である。(重複適用不可
・どちらの規定も年末調整では適用出来ず、確定申告をする必要がある
・セルフメディケーション税制では、適用を受ける人(確定申告を行う人)が(注)一定の取組を実施する必要がある。(家族全員が行う必要はありません。)
・医療費控除もセルフメディケーション税制もどちらも所得控除であり、税額控除でないため、納めた税金がない場合には税金が還付されることはない。
・医療費控除は最大2,000,000円まで、セルフメディケーション税制は最大88,000円までの所得控除が可能。

(注)一定の取組(いずれかひとつでよい)


なお、一定の取組を証明する書類である領収書又は結果通知表には次の事項の記載が必要である
・「一定の取組」を行った者の氏名
・「一定の取組」を行った
・「健康診断健診」などの事業を行った保険者、その事業者若しくは市町村の名称又は診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名
まず着目する点として、適用できるのは医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらか一方の選択適用となっていますので、有利な方を選択します。
具体例を使って控除額を計算していきましょう。


【設例1】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       60,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     80,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。

【答】
(1) 医療費控除
(20,000円+60,000円+80,000円)−100,000円=60,000円

(2) 医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(60,000円+80,000円)−12,000円=128,000円>88,000(限度額)∴88,000円

(3) 医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒88,000円
  
セルフメディケーション税制が導入される前ですと、(1)の医療費控除額の60,000円しか所得控除されなかったのに対し、今回は88,000円の所得控除ができる結果となりました。


【設例2】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       30,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     40,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。


【答】
(1)医療費控除
(20,000円+30,000円+40,000円)−(注)100,000円=△10,000円⇒0円

(2)医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(30,000円+40,000円)−12,000円=58,000円

(3)医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒58,000円

このケースでは通常の医療費控除額が0となり、セルフメディケーション税制を適用すると控除額は58,000円となります。(セルフメディケーション税制導入前は医療費控除の適用を受けることはできない。)

また、セルフメディケーション税制も医療費控除と同様、年末調整では所得控除をすることができず、確定申告をすることによって初めて適用することができます。
従って、会社で年末調整をしたからこれで終わりというわけではなく、医療費がある場合には、ご自身で医療費控除(セルフメディケーション税制)の適用を受けることができるかを確認することが必要となります。
そのためにも、病院に通院した領収書や薬局で購入したOTC薬品の領収書を捨てずに残しておくことが大切になってきます。

 因みに、ワンストップ特例制度を利用してふるさと納税をしている方についてはふるさと納税分についても申告をする必要があるため、注意が必要です。


◆ 添付書類の改正点(紙提出の場合)
 従来の医療費控除の適用を受けるためには、領収書などの添付が義務付けられていました。しかし、平成29年分以降につきましては、領収書の提出義務がなくなった代わりに医療費の明細書を記載し、提出することが義務付けられました。
改正が入った部分は下記の通りです。



現在は経過措置期間となるため、平成31年分の確定申告まではこれまでと同様に領収書の添付又は提示でもよいこととされていますが、領収書につきましては5年間の保存が義務付けられておりますので、きっちりと保管しておきましょう!


◆ 各種明細書につきまして
 医療費控除、セルフメディケーション税制の明細書については下記のリンク先の資料をダウンロードして頂ければと思います。
【医療費控除の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf
【セルフメディケーション税制の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf


◆ 最後に
 平成29年度に子供がお生まれになった方や、医療費や薬代が例年よりもかかった方についてはこれらの制度を利用することで税負担が軽減できるかもしれません。
医療費控除に関わらず確定申告についてお悩みの方は中嶌会計事務所まで是非是非ご相談ください!

 12月になりました。
師走という言葉の通り、ここから忙しくなる方も多いのではないでしょうか。
良い年末年始を迎えられるよう、2017年残り1月頑張っていきましょう。
さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは仮想通貨と税金のお話です。
巷で話題となっているビットコインをはじめとする仮想通貨。
日本は仮想通貨の法整備が進んでいる国でもあります。
では仮想通貨を持っているとどのようなタイミングで課税されるのでしょうか?
今月もわかりやすく解説して参りましょう。

◆そもそもビットコインとは何か
 仮想通貨の一種です。
他にもイーサリアム、リスク、リップル、ライトコイン…といった様々な仮想通貨がありますが、ビットコインが仮想通貨のなかでは普及率が現在最も高い状況です。
仮想通貨といわれてもピンと来ない方もいらっしゃると思うので、イメージの付きやすいものを例に挙げると、オンラインゲームなどの中で利用される「◯◯コイン」と言われるようなものです。
円やドルとこれを交換することで、ゲーム内のアイテムを購入することができます。
これと同様にビットコインも円やドルと交換して利用することで実際に商品を購入す
ることができます。
因みに今現在ビットコインが支払いに使えるお店は以下の通り。
https://jpbitcoin.com/shops
これからもっともっと増えていくことでしょう。

◆今なぜ仮想通貨に注目が集まっているのか
 @ビットコインのメリット
  ・24時間365日取引ができる
   →土日など取引ができなくなる株式やFXなどとは違い、いつでも取引が可能です
  ・少額から取引ができる
  ・送金等の自由度が高い
   →容易に送金ができ、手数料が少額であることが特徴です
 Aビットコインのデメリット
  ・投機的な側面があること
   →色々な要素に左右され、暴騰・暴落を繰り返すため、長期的な投資には向かないという考え方もあります
  ・価値の補償がないこと
   →価値が暴落したり、PCがハッキングされることでビットコインが盗まれたり、悪質な取引所にビットコインを持
   ち逃げされるようなことがあっても、誰も補償してくれません。全て自己責任の世界です

◆仮想通貨の入手方法
   仮想通貨の入手方法には主に2種類あります。
 @円やドルとの交換 
 →仮想通貨の取引所で円やドルと交換して仮想通貨を購入します。
 A採掘(マイニング)
 →例えばビットコインは、その性質上、全ての取引情報を取引台帳に記録する(ブロックチェーン技術といいます。)の
 ですがそれには莫大な計算量が必要になります。そのため、その計算処理に協力(投資)をすることで、報酬としてビッ
 トコインを受け取ることができます。

◆仮想通貨と税金について
   さて、ここからがいよいよ本題です。
 @所得税法上の取扱い
   ビットコインなどの仮想通貨に関する所得の計算方法について説明します。
  仮想通貨を売却した場合、取得額との差額が所得と見なされ、「雑所得」として課税対象になります。
  また、ビットコインを使用することにより生じる利益も同様です。
  具体例を挙げてみましょう。

 【具体例】0.1BTCを20万円で購入して、0.1BTCが25万円になったときに家電量販店で25万円のPCを購入した場合(BTC…ビットコインの単位)



   これはつまり、一度円に換金してそのお金で商品を買ったのと同じ状態ですので利益の5万円部分が課税対象となりま
   す。
   反対に、仮想通貨取引で損失が出た場合には給与所得など他の所得と損益通算はできませんので注意が必要です。(雑所得内での損益通算は可能。)
   ただし、年末調整済みの給与所得を有する方で、仮想通貨の売却又は使用による所得が 20万円以下の方については、その他に所得がない場合、確定申告は不要です。
 A相続税法上の取扱い
   仮想通貨に相続税がかかるのか、という部分についてはいろいろな議論がありますが、現在のところ国税庁から相続
   税の仮想通貨に関する具体的な取扱いは発表されておりません。
   しかし、2016年2月に金融庁がビットコインに貨幣機能があるとの見解を示したため、今後ビットコイン所有者が死
   亡した場合、相続税の課税対象となる可能性は高いと思われます。相続税は死亡した者の死亡時点(課税時期)の財
   産価値に対して課税を行うため、仮想通貨においても死亡時点における価値でもって相続財産と捉えるというのが妥
   当な取扱いとなるのではないでしょうか。

◆最後に
  仮想通貨についてはまだまだ発展途上な部分もあり、現時点ではその取扱いについてわからない部分も多い部分もあり
 ます。
 引き続き、税法の取扱いについて新たな動きがあれば随時更新して参りますので、乞うご期待!
 ただし、くれぐれも仮想通貨への投資は自己責任でお願い致します。

【参考】国税庁 仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)

 今年も早いもので、もう10月ですね。
過ごしやすくなってきましたが、気温の寒暖差が激しい時期でもありますので体調管理には気を付けたいところですね。
 さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは「広大地評価の廃止と地積規模の大きな宅地の評価の新設」についてです。
皆さんの周りで大きな宅地を所有している方はいらっしゃいませんか?
ほっておいてしまうと来年以降多額の相続税、贈与税がかかることになるかも!?
該当する人は早めの対策が必要となります。
そもそも広大地って何?という部分も含めて、詳しく解説していきましょう!

◆改正のポイント
 広大地の詳細な定義などについては後述するとして、まずは改正のポイントについてお話していきましょう。
改正の大きなポイントは以下の2点です。
 @今まで曖昧だった『広大地の定義』の明確化(注1)
 A広大地の評価方法の変更(注2)
もう少しポイントを掘り下げていきますと…
(注1)広大地に該当するかどうかの判断はとても曖昧なものがあり、申告を行う納税者にとっても課税庁側にとっても統一的な判断を行うのが困難な部分があった為、統一的なルールを設けよう!というものです。
(注2)現行の広大地評価はその面積に応じて比例的に減額する評価方法を採用しており、土地の形状・面積などの実態に応じた評価が出来ていなかった点や富裕層の節税対策に利用されている事例もあった点から土地の実態に即した評価が出来るように改正が行われることとなったようです。
上記のポイントをふまえ、現行の広大地評価を廃止するとともに新しく『地積規模の大きな宅地の評価』を新設することとなりました。

◆いつから改正される?
 平成30年1月1日以降に相続、遺贈又は贈与により取得した宅地について適用されることになります。

◆具体的な改正内容について

※上の算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地が所在する地域に応じそれぞれ次に掲げる表のとおりとする。


◆具体例


◆改正によるメリットとデメリット
メリット
「広大地の評価」から「地積規模の大きな宅地の評価」への改正により要件が明確化したこと。また、今まで広大地評価が適用できなかったマンション適地でも面積が500u(三大都市圏以外1,000u)以上で容積率400%(東京都特別区300%)未満の土地であれば、地積規模の大きな宅地の評価が適用できるようになりました。
デメリット
適用できる地区区分が普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区に限定されることにより広大地評価の対象となっていた宅地の範囲が狭くなってしまったこと。また、広大地補正率と規模格差補正率を比較すると、規模格差補正率の方が低いため減額できる金額も少なくなり、土地評価額は高くなってしまうことなどがあげられるでしょう。

◆最後に
 具体例の宅地では評価額が実に3,600万ほどアップする結果となりました。
この改正をふまえて今すでに相続対策を行っている方についても新たに対策を練り直す必要があったり、まだ対策を行っていない方についてはしっかりとした対策が必要となってくるかもしれません。
相続に関するご質問やご相談などについては中嶌会計事務所までお気軽にお問い合わせください!


8月になり、厳しい暑さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは「タワーマンションの固定資産税の課税の見直し(以下、タワマン課税)」についてです。
最近新聞でもよく話題になっており、関心を持たれている方も多いかもしれません。
そこで、タワマン課税ってどういう内容?なぜ規制がかかろうとしているの?という事を簡単にお話しさせていただきます。

◆タワーマンション(注)を使った相続税対策
タワーマンションが好んで購入されたのは、富裕層の方々の相続税対策として使い勝手が良かったからです。具体的な相続税対策について触れるとともに、タワマン課税の問題点についてお話します。
(注) 区分所有家屋のうち、高さが60メートルを超える建築物(建築基準法第20条第1項第1号に規定する建築物)であって、複数の階に人の居住の用に供する専有部分を有するものをいいます。

これまでのタワマン課税の問題点
タワーマンションを取り巻く諸問題は、主に次の2点が挙げられます。

1.固定資産税や不動産取得税が、1階と最上階で同じ
タワーマンションの購入価格は、同じ間取りの場合でも階数が上がるほど価格も上がるのが通例で、その売りの一つは眺望です。階数が増える毎に部屋からの見晴らしが良くなります。また、美しい景色を望める方角は同じ階数でも高くなり、イマイチな景色の方角は安くなります。
そのため、階数や方角で購入価格が異なるのは仕方のないことですよね。
ところが、固定資産税や不動産取得税はそうではないのです。
同じ間取り、同じ床面積ならば、1階でも50階でも、北向きでも南向きでも、素晴らしい景色が見えようが隣のマンションの壁が見えようが、掛かる税金は全くの同額、1円も違いません。
固定資産税や不動産取得税は、固定資産税評価額に税率を乗じて計算しますが、タワーマンションの固定資産税評価額は、タワーマンション全体の建築コストを床面積で各部屋に割り振ったもので、階数や方角は一切加味していません。
そのため、固定資産税や不動産取得税は購入価格と全く比例しない税額となってしまうわけです。

2.富裕層の相続税対策に利用されやすい
先程登場した固定資産税評価額は購入価格の3割〜6割程度になります。
具体的には次のようなイメージ(固定資産税評価額は推定)です。


この固定資産税評価額は、固定資産税等の税金の計算に使われるだけでなく、相続税や贈与税の計算にも利用されています。
例えば、現金2億円を所有する資産家の方が、何もせずに亡くなった場合は、現金2億円に対して相続税が課税されます。
一方で、現金2億円のうち1億円でタワーマンションを購入した方だと、現金1億円+タワーマンション3千万円=1億3千万円に対して相続税が課税されます。
つまり相続税の計算上は、財産を7千万円圧縮できたことになるわけです。

この仕組みはタワーマンションに限った話ではなく、建物全般に共通する仕組みなのですが、タワーマンションは購入後にあまり値段が下がらず、むしろ上がる傾向もあった事や、換金が比較的容易である事から、富裕層の方々の相続税対策として好まれていたようです。

◆平成29年度税制改正
前置きが長くなりましたが、平成29年度税制改正では、前述の問題点のうち固定資産税についての部分が改正されています。
この改正により同じ床面積でも、階数によって固定資産税が変動することとなります。但し、タワーマンション全体での総和は変わりませんので、低層階で安くなった分を高層階で引き受ける形になります。また、方角は考慮されていません。
具体的には、1階を100%とすると、20階で約105%、40階で約110%、というように階数が増える毎に負担割合が上がっていきます。
例えば、改正前の固定資産税が一部屋あたり年間20万円の50階建タワーマンションとすると、改正後は1階で約18万8千円、20階で約19万7千円、50階で約21万2千円となります。

改正は平成30年度から固定資産税が課税されるタワーマンションが対象
上記の改正は、平成30年度から固定資産税が課税されることとなるタワーマンション(ただし、平成29年4月1日前に売買契約が締結された住戸を含むものを除く)について適用されます。
固定資産税はその年1月1日現在で表示登記されているものが対象のため、平成30年1月1日以後に売買契約・表示登記されたものに加え、次の二つの条件を満たす新築のタワーマンションも新ルールの対象です。
・そのタワーマンションの部屋全てが、平成29年4月1日以降に売買契約されたもの
・平成29年12月末までに建物の表示登記がされたもの

既にタワーマンションを所有している方はもちろん、そのタワーマンションのいずれかの部屋が平成29年3月31日までに売買契約されているものや、中古タワーマンションは新ルールの対象外です。

実際の裁決では・・・
タワーマンションを利用した相続税対策についての税務署の目線がかなり厳しくなっているのが実情です。

国税不服審判所によれば平成23年7月1日に以下のような裁決がされています。
【概要】
・平成19年8月にタワーマンションを2億9300万円で購入
・平成19年9月に被相続人死亡
・平成20年7月にタワーマンションを相続した相続人が2億8500万円で売却
・タワーマンションの購入時と売却時の価値はほぼ同等である
【納税者の主張】
相続人は相続したタワーマンションにつき財産評価基本通達(※)に基づき財産評価をし、土地建物合わせて5800万円を相続財産として申告した。
【国税当局の主張】
財産評価基本通達で評価した5800万円ではなく、タワーマンションの購入価額である2億9300万円で申告すべきであると主張した。
【裁決】
タワーマンションは取得価額である2億9300万円で評価するのが相当であると判断した。
(※)相続税・贈与税の計算にあたり、財産を評価する方法として国が定めた一定の基準のこと


裁決の理由をまとめてみます。
財産評価基本通達はあくまでも財産を評価する際の形式的な基準であり、この通達による評価が妥当ではない場合には他の合理的な方法により評価することになります。
上記事例においては、仮にタワーマンションを購入せず購入資金がそのまま相続財産となった場合には、その購入資金2億9300万円がそのまま相続財産として申告されることとなります。
この購入資金をタワーマンションに充てることで財産評価額を2億3500万円減らすことができましたが、相続開始後短期的にタワーマンションを売却したことを踏まえると、相続税を節税するためにタワーマンションを購入したものと考えられます。
したがって、短期的かつ一時的に財産の所有形態がタワーマンションになったに過ぎないものについて財産評価基本通達により評価することは、この通達による評価が妥当でないと認められたようです。
この場合の他の合理的な方法とは、
・タワーマンションの取得日と相続開始日が近いこと
・購入時と売却時の時価はほぼ同等であること
を踏まえると取得時の時価2億9300万円で評価することが相当であるという国税当局の主張が通った形となりました。

このように相続税対策が税務調査でひっくり返された事例もありますので、相続税対策には注意が必要です。相続税対策をお考えの方は、お気軽に中嶌会計事務所までご相談ください。

 6月になりました。すっきりとした5月とは打って変わって、蒸し暑い日が多くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、今月の大ちゃんニュースのテーマは「配偶者控除の見直しについて」。
所得税に関係する論点ですので、気になっていた人も多いはず。
今月も「わかりやすく」を目標に解説して参ります!

◆配偶者控除とは
 そもそも、配偶者控除ってどんな制度なのでしょうか?
簡単に言うと、控除の対象となる配偶者(例えば、妻)がいる場合にその夫(納税者本人)の所得から38万円控除しますよ。という制度です。

控除対象配偶者とは
控除対象配偶者とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件の全てに当てはまる人です。
(1) 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。←正式な婚姻関係がないとダメ。
(2) 納税者と生計を一にしていること。←夫と生計を別にする妻は該当しません。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
 (給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。←例えば個人事業主である夫などから給料を受けている妻は対象とはなりません。

合計所得?給与収入?
 少しややこしそうな用語ですが、解説していきましょう。
所得税の計算に当たっては「収入から必要経費を差し引いた金額が所得」となります。

〈具体例〉(上記の(3)以外の要件はすべて満たしているものとします。)
給与による収入が年間100万円の人(妻)がいるとします。
この場合の妻の所得の計算は、
100万円(収入)−65万円(必要経費※)=35万円(合計所得金額)≦38万円
となり、世帯主(納税者本人である夫)の所得から38万円の控除(配偶者控除)ができます。
(※)この65万円の控除は、「給与所得控除」という規定によるもので、給与収入ごとに控除できる金額が一律に決まっているものとなります。(下記参照)
今回の具体例では100万円(収入金額)×40%=40万円となり65万円に満たないため、65万円が控除できることとなります。

(参考)平成29年分給与所得控除


因みに…
「年間収入103万円までなら税金がかからない」とよく言われますが、実は103万円とはこの給与所得控除の65万円と所得税の基礎控除(この金額までは課税しません、という金額。)の38万円の合計なんですね。

◆もう一つの配偶者控除、「配偶者特別控除」
 じつは、配偶者控除にはもう一つ「配偶者特別控除」という規定があります。
この規定は配偶者控除の38万円の控除が受けられない場合においても、配偶者の収入金額に応じて、控除を受けることができるという規定です。
配偶者控除との大きな違いは配偶者控除が定額の控除(現行)であるのに対し、配偶者特別控除が所得に応じて控除額が変動する、段階的な控除制度であるということです。

◆具体的な改正ポイント
配偶者控除の改正
配偶者控除の額が下記図2のように改正され、合計所得金額が1,000万円(給与収入1,220万円)を超える居住者については配偶者控除の適用が受けられないこととなりました。

配偶者特別控除の改正
今までは配偶者控除の控除額38万円の満額を受けるためには配偶者の年収が103万円以下でなければならなかったところ、配偶者特別控除の額が下記図2のように改正され、配偶者の年収が150万円以下であれば配偶者特別控除として38万円の控除枠が使えることとなりました。

適用時期
平成30年分以後の所得税について適用されることとなります。
従って、本年分は今まで通りです。

図1

 右に伸びた矢印が改正で年収要件が拡大された部分となります。
濃いオレンジ色のところをご覧頂ければ配偶者の給与収入が150万円以下の場合には配偶者特別控除によって38万円の控除額がカバーされていることがおわかり頂けるでしょうか。
 また、配偶者特別控除の年収要件も全体的に拡大されていますね!

図2

現行の制度では配偶者控除は控除対象配偶者の要件を満たす限り、一律38万円の控除を受けることができていましたが、納税者本人の年収に応じて使える控除枠が変わることとなりました。
 また、合計所得金額が1,000万円を超える場合には配偶者特別控除だけでなく、配偶者控除の適用も受けられないこととなりました。


◆最後に
 いかがだったでしょうか?
配偶者控除の制度は歴史が古く、創設されたのは昭和36年となります。現行の配偶者控除は専業主婦を前提とした制度であり、女性の社会進出が近年の社会情勢に対応する形で改正が入ることとなったという背景があるようですね。
このことにより、パートさんや主婦の方が今までより働きやすい環境が整備されていくかもしれませんね。
 ただし、施行にあたっては課題もあるようです。

配偶者手当の見直し
企業の多くが、配偶者控除の適用基準103万円を基準に社員に対して配偶者手当を支給しています。この手当の方が所得税の負担が下がった分よりも大きい世帯も比較的多い、という問題です。控除の金額には階段式の金額が設定されていますが、企業の場合、配偶者の年収が103万円を超えた時点で手当がなくなるケースが多いと思われます。

社会保険料の問題
企業の配偶者手当とは別に配偶者の社会保険料(年金と健康保険)の負担の問題があります。勤務する企業の規模によって配偶者の年収が「106万円」もしくは「130万円」を超えると社会保険料を負担することになるのです。

税制改正の目的を考えた場合、これらを含めてさらなる改革が必要となるでしょう。
改正が入るのは平成30年分以後の申告となりますのでまだ先の話となりますが、具体的にいくら控除を受けられるのかなど気になる方は中嶌会計までお気軽にお問い合わせください。

 今回のテーマは非上場株式(取引相場の無い株式)の評価の改正論点についてです。
平成29年1月1日より、非上場株式の評価方法に改正のメスが入りました。
この改正によりあなたの会社の株が安くなる?高くなる?
事業承継をお考えの社長さん、相続税・贈与税対策は万全ですか?
是非この機会に見直しを!

◆非上場株式の評価方法
 非上場株式は上場株式に比べ、市場のような客観性がないことから、会社の規模に応じて「類似業種比準価額」と「純資産価額」を組み合わせて株価の計算を行うこととなっていますが、今回改正が入ったのは類似業種比準価額の計算方法です。
類似業種比準価額とは?
 →簡単に言うと、「上場している会社と比較して計算した株価」です。
  
 具体的な計算方法は、まず今評価しようとしている会社と同じ業種の上場株式の株価(A)をベースとし、そこに上場株式との配当(B)・利益(C)・純資産(D)の比較割合を乗じて計算します。
 
類似業種比準価額の計算のイメージ(※金額・数値は仮定のものとする。)
〈類似業種の上場会社(X社)〉
A(株価)…500円
B(配当)…10
C(利益)…20
D(純資産)…40

〈評価したい非上場会社(Y社)〉
株価…?円
b(配当)…5
c(利益)…10  
d(純資産)…20 
 
 今、株の評価をしたい非上場会社をY社とし、そのY社と類似業種の上場会社をX社とします。
Y社の株式を評価するにはX社の株価(500円)をベースとし、配当・利益・純資産の比較割合を乗じて計算します。
ここで、X社とY社の配当・利益・純資産の要素を見比べてみてください。
Y社の配当・利益・純資産の要素はX社の要素のちょうど半分(比較割合50%)ですね!
従って、Y社の株価は「500円×比較割合50%=250円」
これがざっくりとした評価のイメージです。

類似業種比準価額の算式
 少し踏み込んで行きましょう!
類似業種比準価額の算定について、具体的にどんな算式を組むかというと…

となります。

因みに先ほどの例で用いたアルファベットが算式のアルファベットと対応しているので、算式に入れてみると…

というような具合です。複雑ですよね。。。

 まとめると、( )書きの算式が上場会社との比較割合を算出する部分で、今回の例では比較割合がちょうど50%となるため、上場会社の類似業種の株価(500円)の半分(250円)になった。というわけです。

 お待たせいたしました。
ここまで話してやっと改正の話ができるのですが、改正が入った所はズバリ!先ほどの算式のA(株価)の部分と比較割合の算式なのです。
◆改正論点@
 まずはA(株価)の部分からいきましょう。
Aは上場会社の類似業種の株価ですが、改正による変更点は以下の通りです。
〈H28.12/31までの相続・贈与〉
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価
→上記のうちいずれか少ない金額
〈H29.1/1以降の相続・贈与〉
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価
・課税時期の属する月以前2年間平均
→上記のうちいずれか少ない金額
このことにより、類似業種の株価が短期間に高騰するようなことがあっても、より平準化した株価を選択できるようになりました。

◆改正論点A
 そして改正論点の二つ目は先ほどの比較割合の算式です。
どこがどう変わったのでしょうか?
まずは先ほどの改正前の比較割合の算式をご覧頂きたいのですが、よくよく算式の分子を眺めてみると、Cの要素(利益)の部分だけ3倍されていますよね。
これはなぜかというと、「会社の株価の算定に当たってはその会社の利益(もうけ)が多分に影響しているはずだ。だから重要性の高いC(利益)の要素については他の要素よりも3倍のウエイトをかけよう!」というわけなんですね。
従って改正前の各要素の割合はB(配当)が@、C(利益)がB、D(純資産)が@となり、1:3:1(合計の5が分母)となっていました。
ところが、今回の改正により平成29年1月1日以降、各要素のウエイトが見直され、B(配当)が@、C(利益)が@、D(純資産)が@となり、1:1:1(分母は3)に変更となりました。


イメージ的には利益の要素が減った分、株価が安くなるような感覚ですね。
改正の背景としては好業績企業の負担を軽くしようという狙いがあるそうですが、利益の金額によっては逆に株価が上がってしまうこともあるようなので、気になる方は株価の試算をご依頼頂ければと思います。

◆最後に
 今回は非常にマニアックな内容になってしまってすみません!
しかし、事業承継等をお考えの方については、非上場株式とはいえその価額は非常に多額となり、相続税・贈与税の対策は必須です!
この他にも改正された論点などもありますので、気になる方は中嶌会計まで是非お気軽にお問い合わせくださいね!

今回のテーマはセルフメディケーション税制についてです。
ニュースや新聞などで目にしたことがある方もおられるかと思いますが、認知度はまだまだ低いようです。
うまく活用できれば、あなたの税金が安くなるかも!?
正しい知識を身に付け、得しちゃいましょう!

◆セルフメディケーション税制ってどんな制度?
 本題に入る前に唐突ですが、皆さんは医療費控除ってご存知でしょうか?

医療費控除とは
 自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、年間10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額。)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる規定。 控除できる金額の上限は200万円。 ただし、保険金などで補てんされた場合はその金額を差し引かなければいけません。(※未払い医療費は含まない。)


これは知っている人がほとんどかと思います。
確定申告をされる方は、ちゃんと医療費の領収書などを保管されていますよね。
今回のメインテーマであるセルフメディケーション税制はこの医療費控除の「特例」として位置づけられる制度なのです。


セルフメディケーション税制とは
 健康の維持増進・疾病の予防として一定の取り組みを行う個人(※1)が、控除対象となる年(※2)に自分や家族のために購入したOTC医薬品の対価の額の合計が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(88,000円を限度とする。)を総所得金額から控除することができる制度。
(※1)・所得税、住民税を納めていること
    ・1年間の間に申告者が健康診断や予防接種などを行っていること
(※2)・平成29年1月1日〜平成33年12月31日(延長される可能性があります。)


 医療費控除は、大きなケガや病気、妊娠出産や歯科医療で多額の治療費を支払った時くらいでなければ医療費が年間10万円を超えることがないので、普段なかなか病院に行かない人には受ける機会が少ない制度でした。
これに対して、セルフメディケーション税制は普段あまり病院などには行かず薬局で薬を買って自分で治療している、という人に所得控除を受けられるようにした制度です。
因みに、
従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の関係を図解で表すと、こんな感じ。





つまり、従来の医療費控除の範囲に加えて、新しくセルフメディケーション税制として医療費控除ができるようになりましたよ!というものです。
※OTC医薬品とは
 →英語の「Over The Counter」の頭文字をとった言葉で、厚生労働省が定めた特定成分を含んだ医薬品のことです。

◆施行日はいつ?いつから受けられるの?
 施行日は2017年(平成29年)1月1日です。
 従って、来年の確定申告(平成30年3月15日期限)において適用を受けることになります。

◆セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の受け方





◆OTC医薬品ってどこでわかるのか?


 


 対象となる医薬品には原則平成29年1月1日以後このマークがついていますが、昨年の在庫が店頭に並んでいる場合等にはマークがついていないことも考えられます。
 その時は、店員さんに確認してもらいましょう。
 また、領収書にもセルフメディケーション税制の対象商品である旨が記載されるようなので、領収書は大切に保管しておいてくださいね。

◆医療費控除との併用はできるの?
 残念ながらできません。
 従って、医療費の領収書とセルフメディケーション税制の領収書はどちらも保管しておき、有利な方で所得控除を受ける!というのがおススメです。

◆具体的にどんな医薬品が対象になるの?
 アレグラ・アレジオン→花粉症の人にとっては朗報です!
 ベンザブロック(銀・青)→黄色のベンザは対象外です笑
バファリン・メンソレータムなどなど。
もっと詳しく知りたい方は、こちら

◆最後に
いかがだったでしょうか。
難しそうな名前ではありますが、それで税金の負担が少しでも軽くなるなら使わない手はないですね。
薬局に行った際は薬のパッケージを見て、セルフメディケーション税制のマークを探してみましょう!
セルフメディケーション税制について詳しく知りたい方は、、厚生労働省のページをご確認ください。

フィンテックについて

 近年新しい金融ビジネスが急成長しており、スマートフォンやビッグデータなどの技術を使った便利な金融サービスが次々と生まれ、個人の生活や会社の取引慣行などを大きく変えようとしています。
 その中で、フィンテック(FinTech)という言葉をよく耳にします。当たり前のように使われていることも増えていますが、まだよく意味がわかっていないという方も多いのではないでしょうか。そこで今回はフィンテックとはどのようなものかを見ていきたいと思います。

【フィンテックとは】
 フィンテック(FinTech)という言葉は、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた米国発の造語だと言われています。日本語だと金融ITや、金融テクノロジーと略されたりします。
金融とIT(情報技術)を融合した金融工学分野の技術革新であり、それに関連するベンチャー企業によるビジネスを指します。また、さまざまな投資ツール、サイバーセキュリティー技術、暗号通貨決済サービスなどが登場しています。

【歴史】
 フィンテックが発展するきっかけを生んだのは、2008年秋のリーマン・ショックとされています。従来の金融に失望した投資家やトレーダーらが、こぞって専門的なノウハウにITを足し合わせて新しいトレンドを作ろうと試み、そこにスマホ革命が勃発し、一挙に加速したとされています。
ちなみにフィンテックという言葉はアメリカで5〜6年くらい前からさかんに使われている言葉のようで、日本では2014年に日経新聞にフィンテックという言葉がはじめてでてきたので、まだ歴史は浅く2年程度です。

【どのようなものに使われているか】
 クレジットカードを利用した電子決済をはじめ、スマートフォンを使う決済や資産運用、ビッグデータ、人工知能(AI)などの最新技術を駆使した金融サービスがそれにあたります。具体的には、スマートフォンなど携帯端末を利用したクレジットカード決済ができるSquareや楽天スマートペイなどがあります。
従来はクレジットカード決済端末という大きな機械を購入し、それを電話回線などにつなぐことでクレジットカード決済は行われていましたが、フィンテックを活用したモバイル決済では携帯端末で決済ができるので、最小限の器具のみでクレジットカード決済が出来るようになりました。

【会計ソフトへの利用】
 会計ソフトについても、インターネットを介して利用するクラウドの会計ソフトがでてきており、クレジット決済取引や銀行取引のデータを自動取得するなどの機能がではじめており、今後の普及が期待されています。
従来、銀行通帳やレシートを会計ソフトに入力するなど時間がかかっていましたが、銀行の取引データなどを利用して自動で会計ソフトに取り込むことが可能となっています。
フィンテックを利用したクラウド会計ソフトには、TKCマネーフォワードfreeeなどがあります。
 このような会計ソフトを利用することにより、個人事業主の方や中小企業経営者の方は、会社の経費についても自動的に記帳することが出来るようになるので、経理コストを大幅に削減することも可能になっています。取引先の数や支出が少ない企業であれば、わざわざ経理担当を雇わなくても社長さんが月数時間程度の作業で完了させることも可能となります。
 平成29年1月から開始するスマートフォンやデジカメ撮影による領収書等の電子保管など、今後ますますフィンテックによって、便利になっていくものとおもわれます。

厚生年金保険・健康保険の適用拡大について

 今回のテーマは、平成28年10月1日より施行される、短時間労働者(パート、アルバイト)に対する厚生年金保険・健康保険の適用拡大についてです。
今回の改正により、今まで社会保険に加入する必要がなかった方なども、加入条件に当てはまることが出てくると思いますのでご注意ください。ではまず、現在の短時間労働者の社会保険の加入条件を見ていきます。


【現在の短時間労働者の社会保険加入条件】
@勤務先の会社が社会保険の適用事業所
A正社員の4分の3以上勤務実態があること。

(例)正社員:1日の基本労働時間8時間 週5日勤務の週40時間
   短時間労働者:1日6時間以上 週30時間以上の労働時間
   →4分の3以上という社会保険入条件を満たす。
B会社に雇われた時の契約期間が一定以上であること。
※雇用契約期間が2か月以内の臨時従業員、日雇い労働者などは該当しません。
現在これら3つの条件を満たせば社会保険に加入できます。

次に、10月から適用が拡大される社会保険の加入条件をあげていきます。

【平成28年10月1日から拡大される短時間労働者への社会保険加入条件】
まず、前提として全ての事業所が適用拡大の対象となるわけではありません。特定適用事業所として定められた事業所のみが今回の適用拡大の対象となります。
※特定適用事業所
同一事業主の適用事業所の厚生年金保険の被保険者数の合計が、1年で6か月以上、500人を超えることが見込まれる場合は特定適用事業所として対象となる。

加入条件の適用拡大の対象となるには、特定適用事業所で以下の条件を満たす必要があります。
@週の所定労働時間(就業規則などで定めている労働時間)が20時間以上であること。
・所定労働時間が週単位で定まっていない場合
(1)1ヵ月単位で定められている場合
・1ヵ月の所定労働時間を12分の52で除して算定します。
(2)1年単位で定められている場合
・1年間の所定労働時間を52で除して算定します。

A雇用期間が1年以上見込まれること。
(1)期間の定めがなく雇用される場合
(2)雇用期間が1年以上である場合
(3)雇用期間が1年未満であり、次のいずれかに該当する場合
・雇用契約書に契約が更新される旨または更新される可能性がある旨が明示されている場合
・同様の雇用契約により雇用された者について更新等により1年以上雇用された実績がある場合

B賃金の月額が8.8万円以上(年間106万円以上)であること。
・賃金の対象にならないもの
(1)臨時に支払われる賃金および1月を超える期間ごとに支払われる賃金
(2)時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金
(3)最低賃金法で算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤・家族手当)

C学生でないこと
・学生であっても以下の条件に該当する場合は、適用拡大の対象になります。
(1)卒業見込証明書を有する方で、卒業前に就職し、卒業後も引き続き同じ事業所に勤務する予定の方
(2)休学中の方
(3)大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の過程の方等

 今回の改正により、今まで配偶者の健康保険の扶養に入るため130万円未満の収入で抑える働き方をしていた人たちも、再考しなければならないことが出てくると思います。また、将来的には社会保険の対象範囲について、平成31年9月までにさらに検討を進めることが法律で決まっています。
平成28年10月からは、まず自分の働いている事業所が特定適用事業所なのか、さらに自分は今回の社会保険の適用拡大の対象に当てはまるのか当てはまらないのかを確認する必要がありますのでご注意ください。

詳しくは日本年金機構ホームページをご確認ください。

土地建物等を譲渡した場合の特例等について

 今回のテーマは、平成28年度税制改正において改正された土地建物等を譲渡した場合の特例等についてです。
 今回、一人住まいの親が亡くなって空き家になった実家(一定の要件を満たすもの)を相続人が売却する場合に、特例で3,000万円まで控除を認めるというものが新たに創設されました。
 近年、空き家問題は増えてきており、祖父母が住んでいた家を相続や贈与により取得し、手がつけられず「空き家」として所有しているケースが増えています。今回の改正は、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例として平成28年4月1日から適用され、「空き家」の件数が抑制されると期待されます。

特例の対象となる家屋は、次のすべての要件を満たすことが必要です。
1.昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
2.区分所有建物ではないこと
3.相続開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと
4.相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと
 (相続した家屋を取り壊して土地のみを譲渡する場合には、取り壊した家屋について相続の時から当該取り壊しの時
  まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと、かつ、土地について相続の時から当該譲渡
  の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと)


特例が適用できる譲渡は次の要件をすべて満たすことが必要です。
1.平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡すること
2.相続が開始した日から3年を経過する日の属する年の年末までに譲渡すること
3.譲渡対価が1億円以下であること
 (ただし、もともと一体だった被相続人居住用の土地建物を相続から3年後の年末までに切り売りし、その合計額が
  1億円を超える場合は適用されない。)
4.譲渡資産が、以下のいずれかに該当するものであること
  @空き家の実家を新耐震基準に適合するようリフォームして敷地とともに譲渡する場合(ただし、家屋全部を取り
  壊す等して行う改築には適用されない。)
  A空き家の実家を除却し、敷地のみを譲渡する場合
  ただし@、Aにつき相続してから譲渡するまでに、譲渡する建物や敷地を相続人が商売など事業の用に供したり、
  他へ貸し付けたりしていないこと


この特例は以下の特例と重複して適用することはできません。
1.固定資産の交換の特例
2.収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
3.交換処分に伴い資産を取得した場合の特例
4.換地処分等に伴い資産を取得した場合の特例
5.収用交換等の場合の特別控除
6.特定事業用資産の買換え・交換の特例
7.大規模住宅地造成事業の施工区域内にある土地等の造成のための交換特例
8.認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内の土地等交換の特例
9.承継業務の事業計画の施行区域内にある土地等の交換の特例
10.特定普通財産とその隣接する土地等の交換の特例
11.平成21年・22年に土地等の先行取得をした場合の譲渡所得の特例
12.相続税が取得費に加算される特例(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)


また、親子間や夫婦など特殊関係者間での売買の場合には、適用できません。

 重複適用できる場合としては、「居住用財産の買換え等の特例」「居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例」「特定居住用財産の場合の譲渡損失の繰越控除の特例」と重複して適用することができます。

 最後にこの特例は、確定申告書にこの特例の適用を受けようとする旨等一定の事項を記載するとともに、被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の登記事項証明書、市町村長の相続開始の直前において被相続人居住用家屋に被相続人が居住していたこと、かつ、被相続人以外に居住をしていた者がいなかったこと等一定の要件を満たす旨の確認書、売買契約書の写し等の添付がある場合に適用することができます。(措法35J、措規18の2二)

詳しくは
平成28年度税制改正のあらまし(国税庁HP)
もしくは、
空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除について(国土交通省HP)
をご覧ください。

 今回のテーマは平成28年度税制改正とその影響についてです。
平成28年度税制改正の主な内容について、紹介していきます。

◯新規の機械装置の投資について固定資産税を半減
 中小企業者等(資本金が1億円以下の企業等)が新規に取得する一定の機械装置※について3年間、固定資産税の課税標準を1/2に軽減する特例が創設されます。具体的には平成28年中に取得した設備は、平成29、30、31年度の3年間固定資産税が半減されます。
※一定の機械装置とは、「中小企業の生産性向上に関する法律」の認定計画に基づき取得する新規(販売開始から10年以内のもの)の機械装置(新品)、1台または1基の取得価額が160万円以上のもの、旧モデルと比べて生産性が年平均1%以上向上するものをいいます。

◯生産性向上設備投資促進税制は適用期限をもって廃止
 平成26年度から適用されている年平均1%以上の生産性を向上させる等の設備を取得した場合の即時償却及び税額控除率の上乗せ措置は、適用期限の平成28年3月31日をもって廃止され、同促進税制の適用期限(平成29年3月31日取得分まで)をもって終了します。

◯法人税率を23.4%に引き下げて企業の税負担を軽減
 法人税率が現行のの23.9%から23.4%(平成28年4月1日以後開始する事業年度)に、またさらに23.2%(平成30年4月1日以後に開始する事業年度)へと引き下げられます※。
これによりいわゆる法人税の実効税率が2%程度下がり、法人税の負担が軽減されます。
※資本金1億円以下の法人等の所得金額のうち、年800万円以下の部分に適用される税率について改正はありません。)

◯中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例の見直しと延長
 中小企業者等が取得した30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例が2年間延長されます。ただし、従業員数1,000人超の法人は対象から除外されます。

◯中小法人の交際費等の損金算入の特例制度の延長
 支出した交際費について、接待飲食費に対する損金算入の特例(1人あたり5,000円以下の飲食費)及び中小法人の年間800万円以下の全額損金算入の特例が2年間延長されます。

◯建物附属設備等の減価償却方法の見直し
 平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物等の償却方法について定率法が廃止され、定額法となります。これにより取得後早期に償却額が多くなる定率法のメリットが受けられなくなります。

◯企業版ふるさと納税の創設
 個人と同じように企業版ふるさと納税制度が創設され、寄附金額の一定額が法人事業税等から税額控除※できるようになります。
※法人事業税については寄附金額の10%(当期の法人事業税額の20%を限度)、法人住民税については寄附金額の20%(当期の税額の20%を限度)、法人税については、法人住民税から控除しきれなかった金額と寄附金額の10%のいずれか少ない金額(当期の法人税額の5%を限度)

詳しい内容についてはこちら(財務省HP)まで。




医療費控除と医療費の補てん金について

 今回のテーマはこの時期になるとよく耳にする、確定申告の医療費控除に関してです。
 医療費控除とは?
そもそも医療費控除というのは、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために医療費を年間10万円(※又はその年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)以上支払った人に、一定の金額の所得控除を受けることが出来るというものです。
では、医療費控除の対象となる医療費にはどういったものがあるのでしょうか。

医療費控除の対象となるもの
・医師又は歯科医師による診療または治療の対価
・治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
・あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師などによる施術の対価
・医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代の費用、コル
 セットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの

ただし、次に掲げるものは医療費控除の対象にはなりません。
・健康診断の費用
 ※健康診断の結果、重大な疾病が発見され、かつその診断等に引き続き、その疾病の治療を
 行った場合は医療費控除の対象になります。
・ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金
・疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないもの
・自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等

次に医療費控除の対象となる金額の計算式に関してですが次のようになります。

(実際に支払った医療費の合計額−@の金額)−Aの金額

@保険金などで補てんされる金額
 (注)保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として
 差し引くので引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
A10万円
(注)その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額等5%の金額

@の保険金などで補てんされる金額とはどのようなものがあるのでしょうか
1.生命保険契約や損害保険契約に基づき医療費の補てんを目的として支払を受ける医療保険金や
  入院給付金、傷害費用保険金など
2.社会保険や共済に関する法律やその他の法令の規定に基づき、医療費の支払いの事由を給付原因とし
  て支給を受ける給付金(例えば健康保険の規定により支給を受ける療養費や出産育児一時金、家族出
  産育児一時金、家族療養費、高額療養費など)
3.医療費の補てんを目的として支払を受ける給付金
4.任意の互助組織から医療費の補てんを目的として支払いを受ける給付金

これらのようなものが補てん金に該当します。
ただし保険金等のなかには、その性質上、医療費の補てん金には該当しないものがあります。
1.死亡したことや身体障害になったこと、一生治らない病気にかかったこと、
  あるいは療養のために働けなくなったことなどによって支払いを受ける休業
  補償金、保険金、損害賠償金
2.健康保険や共済組合から支給される傷病手当金、出産手当金、育児手当金
3.がんと「診断されたこと」を給付原因とする保険金
  ※がん保険の診断給付金は、がんの治療を給付原因とするのではなく、がんと
  いう診断を「受けたこと」に伴い給付される保険金であるため、医療費を補てんする
  目的で支払われる保険金には該当しないことになります。
4.会社や知人等から受ける見舞金

こういったものは医療費の補てん金として扱われないため、医療費から差し引く必要がありません。
 
 どれが医療費の対象になり、どれが医療費の補てん金に該当するのかの判断は少し面倒なところもあるかもしれませんが、年末調整をしたことで確定申告とは無縁とお思いの一般の会社員の方でも医療費控除を受けることが出来ます。もし自分が適用できる対象であるなら、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

証券税制について

 今回のテーマは平成28年1月1日から変更される証券税制についてです。
 平成28年1月1日以後、公社債の譲渡益を原則非課税とする取扱いおよび公社債の償還差益を総合課税の雑所得とする取扱いを廃止し、国債・地方債・上場公社債等(以下、特定公社債等といいます。)の譲渡・償還については、上場株式等に係る譲渡所得等として、所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%の合わせて20.315%の申告分離課税となり、利子等は上場株式等に係る配当所得等として、所得税および復興特別所得税15.315%と住民税5%の合わせて20.315%の申告分離課税となります。そのため、今まで原則非課税であった譲渡益が平成28年1月1日以後から課税される事となり、含み益が発生している場合は年内での売却も検討されたほうが良いでしょう。

 また、特定公社債等については特定口座での保管が可能となり、上場株式等に係る譲渡所得等と上場株式等に係る配当所得等の損益を通算した後に残った損失は、翌年以後3年間の繰越控除が可能となります。
 現在、満20歳以上の居住者であれば利用できる少額投資非課税制度について、0歳から19歳までの未成年者も利用できる少額投資非課税制度が創設され、平成28年1月から口座開設の受付が開始されます。
ジュニアNISAと呼ばれるその制度は、成人版のNISAとよく似ていますが、上限額はNISAが120万円(平成28年~)、ジュニアNISAが80万円となり、3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日までは払い出しに制限がある等異なる部分もあります。

詳しくは
平成28年1月からの個人の方が上場株式等を保有・譲渡した場合の金融・証券税制について(国税庁)
および
ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)に関するQ&A(日本証券業協会)
をご確認ください。

ストレスチェック制度について 

 平成27年12月1日から一定の事業者に対して「ストレスチェック制度」が義務づけられます。
近年、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み又はストレスを感じている労働者が多くいる状況になってきており、職場において、より積極的に心の健康の保持増進が求められてきています。こうした背景を踏まえ、労働安全衛生法の一部を改正する法律が、平成26年6月25日に公布され、職場のメンタルヘルス対策に関して、新たに「ストレスチェック制度」が創設されました。平成27年4月15日に具体的な指針等が公表され、平成27年12月1日から開始されます。

 対象となるのは、従業員数50人以上の事業場で、毎年1回、この検査を全ての従業員に対して実施することが義務付けられました。なお、従業員数50人未満の小規模な事業場については、当分の間ストレスチェック等の実施が努力義務とされました。
 「ストレスチェック」とはストレスに関する質問に労働者が回答し、自分がどのような状態にあるかを調べる簡単な検査です。国が推奨している57項目の質問票に回答し、その結果、医師による面接指導が必要とされた労働者から申出があった場合は、医師に依頼して面接指導実施をすることになります。
面接指導を行った後、医師から意見を聴き、必要であれば就業上の措置を行うことになります。
また、労働基準監督署に対して、ストレスチェックの実施時期、対象人数、受検人数、面接実施人数等の報告を、年に1回行わなければなりません。
 ストレスチェックは個人情報性が高いものなので、その取扱いにも注意が必要です。

詳しくは厚生労働省HP改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について(厚生労働署HP)ストレス簡易調査票(厚生労働署HP)をご覧ください。

国外転出時課税制度について

 今回のテーマは平成27年7月1日から新たに導入された国外転出時課税制度(以下「出国税」)についてです。
そもそも出国税というのは何なのか?平たく言うと、外国に居住地を移す場合に課される税金のことです。といってもどんな人でも海外に移住すると課税されるというわけではありません。課税の対象となるのは以下のような方々です。

@ 国外転出の時に所有等している対象資産の価額の合計額が1億円以上であること。
A 原則として国外転出の日前10年以内において、国内在住期間が5年を超えていること。


これらが条件としてまず挙げられます。
こういった条件に当てはまる方々が、出国する(非居住者となる)とき、その時点において株式などを譲渡したものとみなして株式などの含み益について課税しようとするものが出国税で、政府としては国内から海外へ資本が一斉に流出する資本逃避を防止する狙いがあります。
@の条件にある「対象資産」には、有価証券(株式や投資信託等)、匿名組合契約の出資の持分、未決済の信用取引・発行日取引及び未決済のデリバティブ取引(先物取引、オプション取引など)が該当します。
 出国税の課税対象者は、納税管理人(非居住者に代わって、税務署からの通知を受け取ったり、確定申告を行う者を言います)を選任した場合は、出国日の時価で譲渡したものとみなして課税され、翌年の3月15日までに申告納付しなければなりません。逆に納税管理人を選任しない場合は出国予定日の3ヵ月前の日の時価で譲渡したものとみなして課税され、申告納付は出国日までに行わければなりません。
 しかし出国税には問題点ももちろんあります。含み益を課税対象とするため、担税力のないところに課税することになり、納税資金が不足する事態になることも考えられます。さらに会社都合による海外赴任なども出国税の対象となるので、出国後に株式などを売却しないまま日本に帰国するケースも十分考えられます。ですので、そのような問題点も考慮し、納税猶予や減額措置がしっかりと設けられています。
 納税猶予の期限は原則5年、延長の届出をすれば10年まで延長できます。この手続きを受けるための条件として以下のものが挙げられます。

@ 出国日の属する確定申告にて納税猶予の適用を受ける旨を記載
A 納税猶予分の所得税額に相当する担保を提供
B 納税管理人の届出
C 納税猶予の期限まで毎年末の有価証券等の時価を税務署に届出


これらの手続きを踏めば、5年間(延長申請をすれば10年間)の出国税の納付の猶予が受けられます。この納税猶予の適用を受けた場合にのみ、出国時より安く株式を売却した際、売った時から4ヵ月以内に更正の請求をすることにより還付を受けられたり、株式などを売却しないまま帰国した際に、同じく4ヵ月以内に更正の請求により還付を受けられる減額措置があります。
 もっと詳しく知りたいという方は、国税庁が出国税に関するFAQを公表していますのでご覧ください。

マイナンバー制度について

今回のテーマは来年より始まるマイナンバー制度についてご紹介します。
マイナンバー制度とは、住民票を有するすべての方に1人1つの番号を付して、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報で有ることを確認するためのもので、行政を効率化し、国民の利便性を高め、公平かつ公正な社会を実現するものです。
平成27年10月より12桁の『マイナンバー(個人番号)』が通知されることとなっています。また、法人においては13桁の『法人番号』が指定されることとなっています。
具体的には、確定申告書及び届出書類の提出等、また年金の資格取得や雇用保険の資格取得等の際にマイナンバーを記載することにより、それぞれの個人情報を紐付けし、情報を一元管理することによって、不当な給付を防止することや届出時の添付書類の削減、手続きの簡素化につなげるものです。
 このマイナンバー制度導入による税務面での対応としては源泉徴収票・支払調書へのマイナンバーの記載が大きなものとなります。
従業員へ交付する源泉徴収票、税務署等へ提出する報酬等の支払調書にマイナンバーを記載することになっていますので、年末調整事務をする際に各従業員及び報酬の支払先に対してマイナンバーを提示してもらう必要があります。
また、源泉徴収票においては、扶養家族等のマイナンバーも記載することとなっており、扶養控除等申告書に扶養家族のマイナンバーも記載してもらう必要があります。
提示を受けたマイナンバーが正しいものであるかどうか、番号の確認及び身元の確認の行うことが義務付けられています。
具体的確認方法は、@『個人番号カード』(平成27年10月より通知されるものは『通知カード』と呼ばれるもので『個人番号カード』とは異なります。『個人番号カード』は『通知カード』の通知の際に同封されている発行申請書に顔写真を添えて市町村に郵送することによって取得できる顔写真入りのカードです)の提示を受ける。A『通知カード』のみの提示を受ける。B『通知カード』と運転免許証等の両方の提示を受ける。となっています。
@においては、顔写真入りであるため番号の確認と身元確認が同時に行えます。
Aにおいては、すでに雇用関係があり、雇用時等に身元確認を行っている場合、改めて身元確認を要しないため、番号確認のために『通知カード』のみの提示で良いとされています。
Bにおいては、報酬等の支払先(個人)が、『個人番号カード』を持っていない場合、『通知カード』による番号確認に加え、身元確認のために運転免許証等の提示を受ける必要があります。
マイナンバーはその性質上、個人を特定する情報となるため、その管理及び収集において厳しく制限されています。
その取扱者(個人番号関係事務実施者といいます)は、様々な策を講じて安全に取扱うことが求められています。
平成27年10月から『通知カード』が通知され、平成28年分の扶養控除申告書等から実務の対応が始まりますが、取扱に関する基本方針策定、取扱規程の整備、組織体制等の整備が必要となることから、今から対応を検討することが必要になってくると考えられます。
詳しくはこちら(内閣官房HP)

平成27年度税制改正について
今回のテーマは平成27年3月31日に成立した、平成27年4月1日以降に改正される税制について一部をとりあげたいと思います。
@法人税関係
 まず、法人実効税率が引き下げとなります。現在34.62%ですが、平成27年4月1日からは32.11%へ、さらに来年平成28年4月1日からは31.33%へ引き下げられる予定となっています。
A消費税関係
 次に、消費税率が8%から10%への引き上げが平成29年4月に延期することが決まりました。今年の10月に予定していた10%への増税は消費が落ち込んだため延期となります。今度は景気条項が考慮されないので、再延期はないことになりました。
B所得税・住民税関係
 続いてふるさと納税についてです。すでに確定申告をして寄付金控除の適用を受けている方もおられると思います。総務省の平成26年度の調べでは、全国で約13万件、寄付金額は約142億円になっているそうです。
変更点は一定の要件に該当すれば、確定申告をしなくても寄付金控除の適用を受けることができるようになります。要件としては、サラリーマンや年金生活者などで、かつ、寄付先が5カ所以内の場合です。これまでは、ふるさと納税をして、控除証明書を添付して確定申告をしなければなりませんでしたが、平成27年4月以降に行った寄付については、それが不要となります。
また、寄付金限度額も2倍に増えます。所得に応じて、寄付をした金額から2000円を除いたほぼ全額分が所得税と住民税から減税が受けれますが、その寄付額の上限が2倍に増えます。
詳しくはこちら(厚生労働省HP)
C相続税・贈与税関係
 最後に、孫への贈与が変更となります。これまでの教育資金贈与に加え、結婚・子育て資金に係る贈与税の1000万円の非課税措置が平成27年4月1日以降適用となります。
父母や祖父母など直系尊属から20歳以上50歳未満の子や孫へ1人あたり1000万円(うち結婚費用は300万円)を限度に贈与した場合、非課税となります。
祖父母世代から子や孫の世代へ所得の移転が進むと予測されます。

年末調整について

 今年も残すところあと1か月。ということで、今回のテーマは年末調整についてです。
 給与所得者にとっては必ずと言っていいほどこの時期耳にする「年末調整」という言葉。ただ実際のところ、会社から渡された用紙に記入し、印鑑を押してはいるものの、なぜこのような手続きをしているのかを具体的に理解している人は少ないのではないでしょうか。
 そもそも年末調整とは、給与の支払者によって源泉徴収税額表に基づき源泉徴収された所得税及び復興特別税の1年間の合計額と、その年の給与総額に応じて納めなければならない税額(年税額)とを比較し、過不足額を精算する手続きです。この手続きを経ているからこそ給与所得者の皆さんに税金が還付されるなどのことが起きるわけです。
 ただなぜ源泉徴収された税金の合計額と、その年の年税額が一致しないのか。それには主にこれらの理由が挙げられます。

@実際は年の中途で給与の額に変動がある。(税額表は年間を通して給与の額に変動がないものとして作られている)
A年の中途に控除対象扶養親族の数に異動があっても、遡って各月の源泉徴収税額を修正することとされていない。
B配偶者特別控除や生命保険料、地震保険料の控除などは年末調整の際に控除することとされている。


これら以外にも理由はありますが、こういったことから不一致が生じるわけです。それを精算する手続きが年末調整です。
 ではどういった人達が年末調整の対象となるのでしょうか。

@1年を通じて勤務している人。
A年の途中で就職し、年末まで勤務している人。
B年の途中で退職した人のうち、次の人。
・死亡により退職 
・心身の障害のため退職し、その時期から見て本年中に再就職できない見込み。 
・12月中に支給期の到来する給与の支払いを受けた後に退職。
・パートタイムで働いている人などが退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与が103万円以下。
C年の途中で海外転勤したことなどの理由により、非居住者となった人。


 逆に、年末調整の対象とならない人としては、給与の収入金額が2,000万円を超える人、2か所以上から給与の支払いを受けている人で、他の給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している人や、年末調整を行う時までに扶養控除等申告書を提出していない人などが挙げられます。
 毎年なんとなく行っている年末調整も、こういった背景があるということを理解して会社から渡されている用紙に記入すると、また税への意識も変わってくるのではないでしょうか。
今回は「そもそも年末調整とは?」というテーマを取り上げる形になりましたが、より詳しい年末調整の内容や手続きについては、こちら(国税庁HP)でご確認ください。

消費税免税制度の改正について

 平成26年10月1日以降、消費税の免税制度(輸出物品販売場制度)が変わります。
 これまで、輸出物品販売場における免税販売の対象は「一般商品」のみと限定されていました。しかし改正により、「消耗品」のすべての品目が対象となり、範囲が拡大されます。外国人観光客が多い市町村の免税店が増えると見込まれます。
 「一般商品」とは、消耗品以外の物品。例えば、家電製品、時計、かばん、着物・服などが該当します。「消耗品」とは、6か月以内に消費できる物品。例えば、食料品、飲料類、薬品類、化粧品類などが該当します。
 免税条件は、「一般物品」の場合、同一の非居住者に対して、同一店舗における1日の一般物品の販売合計額が1万円(税抜き)を超えるもの。ただし、一日の販売合計額が100万円(税抜き)を超える場合には、購入者のパスポート等の写しを納税地もしくは販売場に保存しなければなりません。
「消耗品」の場合、同一非居住者に対して、同一店舗における1日の消耗品の販売合計が5千円超50万円以下(税抜き)のもの。
例)「かばん8000円」と「和菓子2500円」=合計10500円の場合、免税条件に該当しないため免税とはならない。

 非居住者が国外における事業用又は販売用として購入することが明らかな物品は、通常生活の用に供する物品に該当しないため、免税販売の対象になりません。
 また、次の販売方法に該当する場合に限り免税販売の対象となります。
@非居住者が、旅券等を輸出物品販売場に提示し、当該旅行券等に購入記録票(免税物品の購入の事実を記載した
 書類)の貼付けを受け、旅券等と購入記録票との間に割印を受けること。
A非居住者が、「消耗品を購入した日から30日以内に輸出する旨を誓約する書類」を輸出物品販売場に提示すること。
B指定された方法により包装されていること。(例えば、開封された場合に開封されたものであることを示す文字が
 表示されるシールの貼付けにより封印をする方法などの要件があります。)

 輸出物品販売場を開設しようとする事業者は、販売場ごとに、事業者の納税地を所轄する税務署長の許可を受ける必要があります。
外国人観光客が多い経営者の方は、一度検討をしてみてはいかがでしょうか?

詳しくは、国税庁HP観光庁HPでご確認ください。

 平成19年12月に発表となった与党税制調査会の税制改正大綱の中にあったものの中で、もっとも注目されたもの。それは50年ぶりとなる相続税制の大改正案で今年の10月から導入が検討されています。
具体的にどのように変わることが検討されているかというと、
『法定相続分課税方式』から『遺産取得課税方式』への改正です。
『法定相続分課税方式』とは、相続財産を法定相続分で分割したものとして相続税の総額を計算し、それを実際に取得した相続財産の割合で按分し相続税を負担する方式で、遺産の額と法定相続人の数が同じである限り相続税の総額は一定となります。
『遺産取得課税方式』とは、相続財産を取得した各人ごとに一定の基礎控除額を設定し、それを超えた財産額、いわゆる課税対象金額に税率を乗じて各人の税額を求める方式で、同額の財産を取得した場合は相続税の負担が同じとなります。

この大改正による影響としては、
・申告義務者が大幅に増加する。
・遺産分割の方法によっては相続税の合計額が異なってくる。
・自己が取得した財産だけで正確な税額の計算・申告ができるため、相続人の1人の申告漏れにより他の共同相続人に追徴税額が発生することはない。
・分割困難な資産の負担は相対的に重くなる。
・課税価格の減額措置は居住などを継続する者のみに減税効果がおよび、他の相続人の税負担は、軽減されない。
などが考えられます。

現状では基礎控除をいくらにするのか、また適用税率は現行のままなのかなど、検討課題は残されていますので今後の動きを注視しておきたいところです。続報が入り次第、またこのニュースでも取り上げてまいります。

 平成20年度の税制改正において、「地方法人特別税等に関する暫定措置法」が新たに施行されました。消費税を含む税体系の抜本的改革が行われるまでの間の暫定措置として、法人事業税の一部を分離し、「地方法人特別税」が創設されるとともに、「法人事業税(所得割・収入割)」の標準税率が引き下げられました。
平成20年10月1日以後開始事業年度から適用されます。これにより、法人は事業税、都道府県民税の他に地方法人特別税を納付することになります。しかし、法人事業税の税率が引き下げられたことにより、法人事業税と地方法人特別税の合計額は、改正前の法人事業税の額より増えることはありません。
 
地方法人特別税は、法人事業税に地方法人特別税の税率を掛けて計算されます。
税率は、以下の税率とされています。(地方法人特別税等に関する暫定措置法第9条)
   @ 外形標準課税が適用される法人・・・・・・148%(所得割額に対する税率)
   A 所得割のみ課される法人・・・・・・・・・・・・ 81%(所得割額に対する税率)
   B 収入割が課される法人・・・・・・・・・・・・・・ 81%(収入割額に対する税率)
地方法人特別税の会計処理は、法人税法上では法人事業税と同じく法人の損金(損金算入)になります。
 ちなみに、法人地方税は法人住民税と法人事業税の2つに分けられ、法人住民税は法人の損金にならない扱い(損金不算入)で、法人事業税は法人の損金になる扱いになります。

 地方法人特別税が創設されたことによる注意点としては、申告書の書き方に変更があった以外は特に影響はないといえるでしょう。

大変革の年

 平成21年の初頭にあたり、謹んで新春のお慶びを申し上げます。
 さて、昨年後半の経済・社会問題の記事を見ると非常に暗いものが多く、昨年10月のサブプライム問題に端を発した金融危機を、あのグリーンスパンFRB前議長は「100年に一度の津波」と表現しています。日本経済は金融面での傷が比較的浅かったため急激な円高となり、海外での消費の落ち込みに加えて為替面でも大打撃を受けることになりました。その結果、車・家電関係の輸出産業は軒並み業績見込みを下方修正し、派遣労働者解雇等の生産調整をはじめ社会問題になっているのは周知の事実です。
 グリーンスパン前議長は「金融機関が自己利益を追求すれば、株主を最大限に守ることになる。」という考えの間違いを認めました。これは、人間の欲望のままに経済活動を放置すれば市場で自動調整機構が作動して社会の利益を最も効率的に増進させるというアダムスミスの経済理念と同一のものですが、今回の金融危機はその欠陥を露呈することになりました。
 ここ数年、企業、経営、行政、食品等々の不正が表面化する頻度が多くなりまたその速度が速まってきましたが、運命学によると、今年は特に全てのことが明らかになる年であるようです。不正は長続きせず即座に淘汰されてしまう。そして新たなスタートが始まる。
そんな大変革、大転換期のスタートの年になりそうです。当然のことながら大変革時には大きな痛手も被ることになります。自社の利益のみを短絡的に追求する企業は排除され、本当の意味で顧客、消費者側の視点に立った企業だけが生き残る。
 中小企業は大企業の影響を直接に受けるため、厳しい試練の年になろうかと思いますがトップの経営理念を明確にすることによって方向転換が容易に図れるメリットもあります。
大変革期を乗り切り大きな方向転換を図るのは大変ですが、私たちにそのお手伝いをさせていただければ幸いです。
 素晴らしい大変革の年になりますようにご祈念申し上げます

中嶌大会計事務所 所長    中嶌 大

 平成20年12月12日に与党より平成21年度税制改正大綱が発表になりました。今回の税制改正大綱は、大幅に減税するものとなっています。
 中小企業対策として注目されるのは、法人税率引き下げで、現在の年800万円以下の所得に対して認めている軽減税率22%を18%にまで引き下げるというものです。これは適用期限があり、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度となっています。
 また、現在は設立後5年以内の中小企業など適用が一部に限られている欠損金の繰戻還付制度についても復活し、公益法人・協同組合や人格のない社団なども対象とされました。
 欠損金の繰戻還付制度とは、前事業年度は黒字で法人税を納めた企業が、次年度赤字に転落し欠損金が生じた場合、その欠損金額を前事業年度の所得に繰り戻して、納めた法人税のうち、納めすぎとなった部分を還付請求することが出来るという制度です。ただし、注意が必要となるのはずっと赤字である企業は使えないということです。
 また、適用を受けることが出来る企業であっても、慎重な対応が必要となります。それは、欠損金が出た場合に、翌期以降7年間、所得よりその欠損金額を控除できる欠損金の繰越控除を適用することが出来るからです。
 繰り戻し還付による手元資金の充実と将来の税負担を軽減する繰越控除、将来の自社の動きを予測しながら、どちらを選択するかを決定することとなるでしょう。

平成20年度税制改正の主な改正ポイントについて

@ 「中小企業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例」の適用期限の2年延長
 これは、平成15年の税制改正で創設された特例制度で、適用期間内に取得した30万円未満の減価償却資産を合計300万円を限度(平成18年の税制改正)として、一括経費にできるというものです。ただし、この特典を受けられるのは、青色申告者に限ります。この特例制度の目的は、設備投資を行う中小企業者に対する優遇措置ということになります。この適用期間が、平成20年4月1日から平成22年3月31日までの2年間延長されました。
A 医療費控除の改正
医療控除について、特定健康検査(メタボ検診)の結果、特定保険指導を受けることになった場合は、それに係る費用が対象に加えられました。対象になるのは、保険指導を受けるための検診費用のみで、保険指導に従って運動や食事の改善にかかった費用は対象外になります。
B 寄付金控除の改正
寄付金控除について、平成20年4月1日以降に、法律に規定されるところの特定新規中小企業に該当する株式会社の株式を取得した場合、1,000万円を限度として、適用を受けることができることになりました。これは、創業期のベンチャー企業への投資を促進するために設けられた優遇措置になります。ただし、控除を受けた場合は、株式を売却する際に株式の取得価額から寄附金控除額を差し引かなければなりません。
C住宅借入金等特別控除の改正
これは、省エネ改修工事が住宅借入金等特別控除の適用対象に加えられました。省エネ改修工事とは、窓の改修工事や床や天井、壁の断熱工事などになります。住宅ローンを利用して、平成20年4月1日から平成22年3月31日までの間に改修工事を行った場合、一定の要件を満たすと「特定増改築等住宅借入金等特別控除」を受けられます。控除期間は5年間です。

以上、平成20年度税制改正の主な改正をピックアップしましたが、必要経費の範囲や所得控除、税額控除は、節税ポイントになります。確定申告書の作成時には気をつけましょう。

相続税・贈与税の納税猶予制度について

 平成21年度の税制改正により、取引相場のない株式などに係る相続税・贈与税の納税猶予制度が創設されました。これは、より円滑な事業承継を促進するためのものです。
 まず、非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度について、@被相続人、経営承継相続人ともに、会社の代表者であった(ある)A被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であった(ある)場合に、経営承継相続人が納付すべき相続税のうち相続などにより取得した議決権株式(相続開始前からすでに保有していた議決権株式等を含め、その会社の発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分に限る)などに係る課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶予されます。
 また、経営承継相続人には@5年間事業を継続するA相続人が代表者であるB雇用の8割を維持するC対象株式を担保提供する等の要件を満たす必要があり、満たされなくなった場合には、猶予税額の全額を納付することとなります。適用の開始は平成20年10月1日以後の相続等となります。
 また、一定の後継者が、経済産業大臣の認定を受けた非上場会社を経営していた親族から贈与により保有株式などの全部(贈与前からすでに保有しているものも含め、発行済議決権株式等の総数等の3分の2に達するまでの部分を上限)を取得し、会社を経営していく場合には、その猶予対象株式などの贈与に係る贈与税の全額の納税が猶予されます。猶予税額の納付、免除等については、相続税の納税猶予と同様になり、贈与者の死亡時には、猶予対象株式などを相続により取得したものとみなし、贈与時の時価により、他の相続財産と合算して相続税を計算することとされます。その際、経済産業大臣の確認を受けた場合には、相続税の納税猶予が適用されます。適用は平成21年4月1日以後の贈与からとなります。

詳しくはこちら>>
【非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予の特例のあらまし(国税庁)】

独立・新規開業をされた方、もしくはお考えの方(法人・個人問わず)を対象に無料相談会を下記の日程で実施いたします。
開業時の各種届出書類の作成サポートから、日々の会計事務の進め方、その他開業するにあたっての不安や悩みについて、無料でご相談をさせていただきます。
ぜひ、当事務所までご相談にいらして下さい。

〈無料相談会実施について〉
平成21年4月14日(火)・21日(火)
午前9時30分〜午前12時・午後1時〜午後5時
※予約制ではありませんが、前もってお電話いただいた方につきましては優先的にご案内させていただきます。
※相談会場は当事務所となります。アクセスについては事務所案内のアクセスマップをご覧ください。

※来所される際には、下記のものをご持参ください。
○開業された(される)事業の内容がわかるもの
○税務署等、既に届出された書類がある場合は当該提出書類

無料相談会については、随時実施してまいりますが、ご都合の合わない方につきましては
個別での無料相談もいたしております。
お申込については、お電話か24時間受付フォームよりご連絡ください。

住宅資金贈与の非課税枠500万円上積みについて

政府が追加経済対策の一環として国会に上程した「租税特別措置法の一部を改正する法律案が最近新聞などの報道で採り上げられています。
 今回はそのうちの一つ、住宅資金贈与の非課税枠500万円上積み(平成21年5月31日現在未成立)」についてを採り上げてみました。
贈与税については、1年間に贈与を受けた金額が贈与税の基礎控除である110万円以下であれば贈与税が課税されません。
 今回、この基礎控除110万円に住宅購入や一定の増改築に限り、500万円上積みして、年610万円まで贈与税を課税しないようにするということです。(ただし、相続前3年以内の贈与に限り、相続財産にプラスされます)
相続時精算課税制度の住宅取得等資金の特例は、贈与を受けた時には、3,500万円までは一旦課税しないが、将来相続があった時に贈与を受けた金額を相続財産にプラスして相続税の計算を行うという制度です。
今回の住宅資金贈与の非課税枠500万円上積みは通常の「暦年課税方式」の適用を受ける受贈者、「相続時精算課税方式」の適用がある受贈者のどちらでもそれらと併せて受けることができます。
対象となる住宅の購入条件や贈与される人の年齢制限は現行の相続時精算課税制度の住宅取得等資金の特例と同じですが、現行の相続時精算課税制度の住宅取得等資金の特例では贈与する人が親に限られていました。しかし今回の住宅資金贈与の非課税枠500万円上積みでは祖父母など直系尊属からの贈与を受けた場合も適用できることとなります。
適用期限は平成21年1月1日から平成22年12月31日までとなっていますので現在住宅購入を考えている方で住宅取得資金の贈与を受ける予定の方は適用を検討されてみてはいかがでしょうか。

上記法案は平成21年6月19日に国会で成立いたしました!!

法人税関係法令の改正について

 平成21年6月26日に『租税特別措置法の一部を改正する法律(平成21年法律第61号)』が公布・施行されました。その中でも法人税に関係するものをピックアップしました。

 交際費等の損金不算入制度の改正
今までは、法人税法上、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(これを中小法人といいます)においては、交際費等として計上した金額のうち年400万円に達するまでの金額の90%までしか法人税額の計算上、損金と認められませんでした。(400万円以上については全額損金として認められませんでした。)この400万円のことを定額控除限度額というのですが、今回、この定額控除限度額の引き上げが行われ、年600万円となりました。実際には、交際費等の額として計上した金額のうち、600万円に達するまでの金額の90%が損金として認められることになりますので中小法人のすべてが直接的に恩恵を受けるわけではありませんが、法人税の計算上は減税となります。この改正は平成21年4月1日以後に終了する事業年度から適用されています。
 試験研究を行った場合の特別税額控除制度の改正
平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に開始する事業年度において税額控除の適用を受けることの出来る限度額が当期の法人税額の20%相当額から30%相当額に引き上げられました。また、平成23年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する事業年度において税額控除限度超過額を繰越控除する場合には、繰越控除の対象となる金額に平成21年度で生じた繰越税額控除限度額を含めることとし、平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度においては、平成21年度・平成22年度に生じた繰越税額控除限度超過額を繰越控除の対象となる金額に含めることとされました。平成23年度・平成24年度の限度額についても30%相当額とされています。

中嶌大会計事務所では経営革新セミナーを下記日程で開催いたします。
10月14日(水)・23日(金)の2日間、違ったテーマでのセミナー開催を予定しており、1回のみのご参加や2回とものご参加等、ご都合に合わせて選択していただけます。また、当事務所の関与先様だけでなく、他の事務所や税理士が関与されていない方でもご参加いただけますので、お誘い合わせの上、お申込ください。(ご参加いただく方の氏名や住所等の個人情報につきましては、セミナーへの参加以外の目的での使用はいたしません。)

日時          平成21年10月14日(水) 17:00〜20:00
             平成21年10月 23日(金) 17:00〜20:00


開催場所       奈良市芝辻町4丁目11-8 当事務所3階 研修室
             詳しい場所・地図はこちら>>


募集人数       各回先着20名(1社につき2名まででお願いします)


テーマ       「変化をチャンスへ!−顧客貢献の視点で経営の本質を見直そう」


タイムスケジュール

 17:00〜17:10   オープニング


 17:10〜18:10   「変化をチャンスへ!−顧客貢献の視点で経営の本質を見直そう」


 18:10〜18:15   休憩


 18:15〜18:45   「金融危機は千載一遇のチャンス!−会計で会社は強くなる」


 18:45〜18:50   休憩


 18:50〜19:50   14日(水)「会計データからつかむ業績アップの着眼点」
             23日(金)「黒字体質の会社をつくる8つのステップ」

 19:50〜20:00   クロージング


 20:00〜21:00   懇親会(参加希望者のみ)


※14日(水)・23日(金)とも時間は同じです。
 予定時間については当日の状況により多少前後することがあります。当日は時間に余裕をもってご参加ください。また、複数回ご参加いただく方のみ日別セミナーテーマからのご参加も受け付けています。ご希望の方は、参加申込時にその旨をお伝えください。


参加費用         無料
              但し、懇親会参加の方のみ3,000円(税込)


申し込み方法      当事務所まで直接お電話いただくか、
              24時間受付フォームより
              必要事項入力の上、『ご相談内容』の『その他』をチェック、
              『内容詳細』に『○月○日の経営革新セミナー参加希望』と
              入力の上、送信してください。追って当事務所よりご参加内容の
              確認と詳細についてご連絡いたします。
 
         
その他           その他セミナーの内容等につきましては、直接ご連絡ください。
               (担当 松村)

税制改革と税制改正について

 政権交代で税制改革が注目されます。
民主党はマニフェストの中で税制改正過程の抜本改革を謳っています。「税制改正について、公平・透明・納得という納税者の視点に立った原則の下で政治主導の政策決定を行うとともに、政策決定の過程も透明化します。」(民主党政策集INDEX2009より抜粋)と述べています。
 今回、税制改革が今後どのように行われるか注目される中で主な内容をピックアップしました。

≪税制抜本改革の主な内容≫
・ 租税特別措置透明化法を制定して租税特別措置を見直す。
・ 所得税は高所得者に相対的に有利になる所得控除(配偶者控除、扶養控除など)から
  税額控除や手当て(子ども手当など)に切替える。
・ 消費税を財源とする最低保証年金を創設する。
・ 公的年金等控除について平成16年度改正以前の状態に戻し、65歳以上の方の最低
  保障額を120万円から140万円に引き上げ、また、老年者控除(50万円)を復活させる。
・ ガソリン税や自動車重量税などの暫定税率を廃止する。
・ 中小法人の軽減税率を18%から11%に引き下げる。
・ 特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度を廃止する。
・ 相続税について富の一部を社会に還元する考え方に立つ「遺産課税方式」への転換を
  検討する。
・ 特定非営利活動法人支援税制等の拡充を行う。
 
また、これまでの税制改正議論が与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議によってバラバラに行われてきましたが、これからは財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行うようになります。
 こうしたことから、各省庁の税制改正要望等を受け議論される平成22年度税制改正に注目したいです。

経営革新セミナーを開催いたしました!!

中嶌大会計事務所では、去る10月14日(水)と10月23日(金)に『TKC経営革新セミナー2009 変化をチャンスへ!−顧客貢献の視点で経営の本質を見直そう−』を開催させていただきました。お忙しい中、両日ともたくさんの方々にご参加いただき厚く御礼申し上げます。
所長 中嶌の講演のあと、14日は『会計データからつかむ業績アップの着眼点』をテーマに監査担当の川崎が変動損益計算書による会計データを利用した分析について、また23日は『黒字体質の会社を作る8つのステップ』をテーマに監査担当の稲村が黒字化転換のための方策・手順についてお話をさせていただきました。
今回、このようなセミナーを開催させていただきましたのは、日々皆様と巡回監査等でお会いさせていただく中で、『もっとお客様のためにできることはないのか』という思いから企画させていただきました。ただ、なにぶんセミナーの開催をさせていただくのが初めてというスタッフが、企画立案から開催まで担当させていただきましたので、ご参加いただきました皆様には準備の不充分等、何かとご迷惑をおかけしたと反省をいたしております。しかし、ご参加の方々からは『今回のセミナーに参加してよかった。もう一度初心に戻り、がんばっていこうと思う』という心強いお言葉をいただき、当事務所としても開催の意義を再確認できました。
今後も様々なセミナーを開催する予定をしております。
内容等については順次HP等で掲載させていただきますので、ご期待くださいますようによろしくお願い申し上げます。

『TKC経営革新セミナー2009』のかわら版についてはこちら>>

兄弟が同額ずつ仕送りしている両親の扶養控除について

 年末調整の時期となり、扶養控除等(異動)申告書を書いて会社に提出する方が多いと思います。先日お客様から別居していて兄弟が同額ずつ仕送りをしている両親を兄弟それぞれが扶養控除を受けられるのかとの質問をうけました。扶養控除などについての疑問をお持ちの方が多いと思いますので今回はその関連について説明いたします。

 まず、「扶養親族」とは、その年の12月31日の現況で、次の四つの要件のすべてに当てはまる人です。
(1) 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
(2) 納税者と生計を一にしていること。
(3) 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(4) 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。

 ですので、別居の親で扶養控除を受ける場合、上記(2)や(3)の要件を満たしているか確認する必要があります。
 また、両親の年齢が70歳以上であれば老人扶養親族に該当し、控除額が上がります。 所得税の計算をする場合の配偶者控除の額や扶養控除の額は、控除対象配偶者や扶養親族の年齢や特別障害者に該当するかによりこちらの表のようになります。

 また、仕送りについて生活費の範囲以内の金額かどうかによっては贈与税がかかる可能性がありますので注意が必要です。贈与税にあたらない場合は以下の要件に該当する場合です。
詳細は
『贈与税がかからない場合』
『扶養義務者からの生活費等関係』を参考にしてください。(ともに国税庁HPが開きます)

 兄弟で同額ずつ別居の両親に生活費を仕送りしている場合、兄弟のうちだれか1人だけが扶養控除の対象とすることができます。ただし、兄弟がそれぞれ重複して控除の対象とすることはできません。
 また、両親を兄弟で一人ずつ扶養控除にすることが可能なのかどうかについては以上のような仕送りが生活費の範囲内で扶養親族の要件に該当していれば問題ありません。

平成22年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
昨年は16年ぶりに政権交代が行われ鳩山連立政権が誕生し、政治面でも経済面でも今まさに大きな転換期を迎えております。
企業の経営環境は、平成20年秋のリーマンショックによる世界同時不況から続く景気の低迷が底を打ち、徐々に回復傾向にあると言われております。
しかしながら私どもの関与先である中小企業は、円高によってダメージを受け、消費の低迷からデフレスパイラルに飲み込まれています。世界的に見ても日米欧が戦後初めてマイナス成長となり、失業率も増加の一途をたどっている。今年の新年は正にこのような厳しい向かい風の中でスタートしたわけです。
皆様経営者は不況を嘆くことなくまた流されることなく、不況を前提とした上で、企業環境が根底から大きく変わっていることを十分認識され、経営というものをいま一度見つめ直し、まず今自分に何が出来るのかを考えていくことが大切だと思います。
今年はある意味正念場です。過去の延長線には未来はありません。全く新たな観点から「ビジョン」を明確にし、目的を達成する為の「戦略」を立て、それを「経営計画」に落とし込み、当初目標に近づけるべく行動結果を逐一検証していく。そして、その過程でも「ビジョン」、「戦略」に誤りがないかを問い直し、問題があれば即時転換していく行動力も大切です。
私たちは皆様に協力し、一緒に歩んでいきたいと思っております。
今年は皆様にとりまして充実した年になりますように祈念申し上げます。


中嶌大会計事務所 所長   中嶌 大

平成21年分確定申告のポイント・配当所得について

平成21年分の確定申告の時期が近づいてきました。申告を必要とされる方は、そろそろ準備をされているころではないかと思います。
平成21年分の確定申告のポイントについて、今回、配当所得をクローズアップしたいと思います。
 まず、配当所得とは株主や出資者が法人から受ける配当や投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)及び特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得をいいます。
 配当所得については、所得税15%・住民税5%が源泉徴収されることとなっていますが、平成23年12月までの上場株式等の配当等(発行済株式の総数等の5%以上に相当する数又は金額の株式等を有する個人を除く)については所得税7%・住民税3%の軽減税率が適用されることとになっています。
 配当所得は、原則として総合課税の対象とされますが、特例として、確定申告不要制度が採られています。従来、配当所得は、給与所得等と合算される総合課税を選択し、配当控除を受けることができましたが、高額所得者にとっては総合課税の選択は不利になり、申告不要を選択している人が多数でしたが、平成21年1月1日以後に支払いを受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税によらず、申告分離課税を選択することができるようになりました。
これにより上場株式等の譲渡損と上場株式に係る配当金との損益通算ができるようになり、この損益通算を利用して、配当から源泉徴収されていた源泉所得税の還付を受けることができるようになります。
ただし、すべての人が申告有利となるわけではなく、他の所得者の配偶者(扶養)控除の適用を受けている人は、配当所得を申告することによって配偶者(扶養)控除の要件を満たさなくなり、結果として他の所得者の税金を増やしてしまうことになってしまう等、申告する場合には慎重に検討することが必要となります。

平成22年度税制改正について

平成22年度税制改正は主に以下のようなものとなっています。民主党政権になって初めての税制改正であり、大きなところでは扶養控除の一部廃止・縮小、中小法人の軽減税率引き下げの見送りや一人オーナー会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度の廃止等、注目すべき点が含まれています。


○中小法人の軽減税率引下げは見送り 
民主党はマニフェスト(政権公約)で中小企業の法人税の軽減税率引き下げを提唱していましたが、実際の減税は平成23年度以降に先送りされています。なお、平成21年度税制改正により、平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得金額のうち、800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率は18%に引き下げられています。

○一人オーナー会社における業務主宰役員給与の損金不算入制度を廃止 
平成22年4月1日以後に終了する事業年度から適用されないことになります。なお、特殊支配同族会社の役員給与に係る課税はいわゆる「二重控除」になりかねないとの指摘があるため、個人事業主との課税の不均衡を是正する抜本的措置が平成23年度税制改正で講じられる予定です。

○中小企業の少額減価償却資産の特例延長 
中小企業者等が30万円未満の少額減価償却資産を取得した場合、その減価償却資産の年間合計額300万円を限度として全額損金算入できる制度の適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。

○中小企業の交際費の損金不算入の特例延長
交際費等の損金不算入制度の適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。600万円までの90%相当額について損金算入が可能です。そして、交際費支出が600万円以上の場合、損金算入限度額は540万円になります。

○中小企業投資促進税制の延長 
中小企業者等が一定の設備投資やIT投資等を行った場合、税額控除(7%)又は特別償却(30%)ができる中小企業投資促進税制について適用期限が平成24年3月31日まで2年間延長されます。

○グループ法人税制の整備
企業グループの一体的運営が増加している中、課税の中立性や公平性確保等の観点から、100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等の損益の繰延や受取配当の全額益金不算入などの整備が行われます。なお対象法人は、連結納税制度を採用する法人以外の100%支配関係のグループ法人すべてとなるので注意が必要です。適用は原則的には平成22年10月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

○住宅取得等資金の贈与の非課税限度額の引上げ
直系尊属(父母、祖父母、曽祖父母)から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の措置が講じられます。
非課税限度額(従前500万円)が、平成22年中に住宅取得等資金の贈与を受けた人(改正前の制度500万円と選択適用)は1,500万円、平成23年中の人は1,000万円に引き上げられます。なお暦年贈与の基礎控除(110万円)は従来通り適用できます。
なお、適用対象者は贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下の人に限定されます。適用は平成22年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用され、その適用期限は平成23年12月31日までとなっています。

○扶養控除の一部廃止・縮小
年少扶養親族(扶養親族のうち、年齢16歳未満の人をいう。)に係る扶養控除が廃止されます。また、特定扶養親族(扶養親族のうち、年齢16歳以上23歳未満の人をいう。)のうち、年齢16歳以上19歳未満の人に係る扶養控除の上乗せ部分25万円(個人住民税は12万円)が廃止され、扶養控除額が38万円(個人住民税は33万円)とされます。この改正は、平成23年分以後の所得税及び平成24年度分以後の個人住民税について適用されます。

欠損金の繰越しと繰戻し還付について

平成21年度税制改正で、一部を除き不適用となっていた欠損金の繰戻しによる還付が、平成21年2月1日以後終了事業年度の中小企業者等から適用できることとなりました。また、同じく平成21年度税制改正で平成21年4月1日から平成23年3月31日までの間に終了する各事業年度の所得の金額のうち800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率が22%から18%に引き下げられました。
これらの税制改正により前期が黒字申告で税金を納め、当期が赤字申告の場合、当期の欠損金を繰越すかそれとも繰戻し還付請求するかいくつかの点から検討する必要があります。
 まず一つは、還付請求書を提出した場合には「その請求の基礎となった欠損金額その他必要事項について調査する」ことが税法で規定されていますので、調査に時間を要することです。
 二つ目は欠損金を繰越す方が有利だったとしても、その時の資金繰りによっては還付請求をした方が良い場合があります。当期が赤字申告の場合、特に資金が減っていることが予想されますのでその点を考慮しなければなりません。
 そして三つ目は、所得金額によって税額の有利不利をシミュレーションすることです。

ここで例を出して考えてみます。
ある中小法人で前期所得金額は1800万円、法人税額は800万円部分が176万円(税率22%)、800万円を超える部分が300万円(税率30%)とします。そして当期所得金額は△800万円だったとします。また、翌期の黒字金額はA:1800万円の場合とB:800万円の場合の二通りで考えてみます。

欠損金の繰戻し還付金額の計算式は
(還付金額)=(黒字年度の法人税額)×(当期の欠損金額)÷(黒字年度の所得金額) です。

比較表はこちら>>
  
Aの場合は、欠損金を繰越す方が還付金を請求する場合より有利になります。これは還付請求の場合は(黒字年度の法人税額 476万円)×(当期所得金額△800万円)÷(黒字年度の所得金額1800万円)≒212万円の還付金額になるのに対し、欠損を繰越す場合は翌期の黒字額1800万円のうち800万円が欠損金で相殺され課税所得金額1000万円のうちの800万円が18%、200万円が30%課税され法人税額が204万円となり、1800万円の黒字金額が欠損金で相殺される方が節税の幅が大きくなるからです。つまり還付請求する場合は税率が22%部分と30%部分に按分されて還付金額が計算されるのに対し、欠損金を繰越す場合は欠損金800万円を黒字金額から相殺する部分の税率が30%部分となるため節税の幅が大きくなります。
一方、Bの場合、還付金を請求する方が欠損金を繰越す場合より有利になります。これは還付請求の場合は当期所得△800万円が22%部分と30%部分に按分され還付になりますが、欠損を繰越す場合は欠損金800万円を税率18%部分の黒字金額800万円と相殺するため節税幅が還付金を請求する場合よりも小さくなるためです。

以上のことから前期の課税所得金額、法人税額と当期の課税所得金額、法人税額が確定した場合、翌期の損益予想をして30%部分の節税幅がどれくらいかを考慮して有利不利を判断する必要があります。
 還付請求した場合の還付加算金については、その計算期間は還付請求がされた日または欠損事業年度の確定申告書の提出期限のいずれか遅い日の翌日以後3か月を経過した日から、その還付の支払い決定をする日またはその還付金について充当をする日までとなっています。
 なお、欠損金の繰戻し還付の適用があるのは法人税だけで、事業税等の地方税ではこのような制度はなく、欠損金の繰越し額が法人税と事業税等でズレることがあります。

グループ法人税制について

 平成22年度税制改正によりグループ法人税制が制定されました。
グループ法人税制とは、会社法、連結納税制度・組織再編制度等が背景となって、分社化・完全子会社化による企業グループが形成され、一体化運営がなされている状況を踏まえて制度化されたグループ内取引等に関する税制度のことです。
 グループ法人税制は、完全支配関係を有する法人をグループとして選択適用である『連結納税制度』と強制適用である『グループ法人単体課税制度』に分類されますが今回は『グループ法人単体課税制度(以下、グループ法人税制といいます。)』をクローズアップします。
 グループ法人税制の適用対象法人とは100%グループ内、一の者(個人である場合はその者と民法第725条に定める親族等特殊関係にあるもの等を含む)が法人の発行済株式等の全部を直接もしくは間接に保有する関係、いわゆる完全支配関係のある法人です。
 具体的には以下のような取引がグループ法人税制に該当します。

@ 一定の資産(※1)の譲渡損益を、グループ外へ移転した時まで繰り延べる。
※1一定の資産とは固定資産、棚卸資産たる土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産で以下
に掲げるもの以外のものをいいます。
   ○売買目的有価証券
   ○譲受法人において売買目的有価証券とされる有価証券
   ○その譲渡の直前の帳簿価額が1,000万円に満たない資産

A グループ法人内の寄付金について、寄付金支出法人において全額損金不算入するとともに
寄付金受領法人において全額益金不算入とします。
  なお、受贈益の額は、寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってされるかを問わ
ず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与(広告宣伝及び見
本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの
を除く)を受けた場合におけるその金銭の額もしくは金銭以外の資産のその贈与の時における価
額又はその経済的利益のその供与の時における価額によるものとされています。

B グループ内の内国法人からの受取配当金について全額益金不算入とします。また、グループ
内の内国法人の株式を発行法人に対して譲渡する等の場合は、その譲渡損益を計上しないこと
とし、現物分配(みなし配当を含む)については、譲渡損益の計上を繰り延べ、源泉徴収等を行
わないこととなります。

C 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る以下の制度については、資本金の額
もしくは出資金の額が5億円以上の法人、相互会社(外国相互会社を含む。)又は受託法人との
間にこれら法人による完全支配関係がある普通法人には適用しないこととなります。
   ○軽減税率
   ○特定同族会社の特別税率の不適用
   ○貸倒引当金の法定繰入率
   ○交際費等の損金不算入制度における定額控除制度

このグループ法人税制は大企業にのみ影響を及ぼすものではなく、中小企業にとっても非常に注意すべきものとなっています。
また、Bのうち受取配当の益金不算入とCの中小企業特例の適用除外については平成22年4月1日以後開始事業年度から適用されており、多くの企業がすでに適用されています。
その他のグループ税制についても平成22年10月1日以後から適用されることとなっています。詳しくは以下を参照してください。
『平成22年法人税関係法令の改正の概要(国税庁)』

消費税仕入税額控除の調整措置の改定
(消費税等の仕入税額控除の調整措置に係る適用の適正化)

 消費税法の一部が改定され、平成22年4月1日以後、いわゆる「賃貸マンション等の取得費用に係る消費税の還付に対する制限措置」が適用されることとなりました。具体的には、賃貸マンション等を取得した個人事業者が、課税事業者と免税事業者の使い分けを行うことにより、建物等の取得費用に係る消費税額の還付を受けるというものに対して規制をかけることになります。
 これまでの消費税法では、課税事業者を選択した場合、「2年間免税事業者に戻ることはできない」こととされていましたが、建物等の一定の固定資産を取得した個人事業者については、「3年間課税事業者となることを強制」する法改正を行うことにより、建物等取得後3年間の通算課税売上割合が取得時よりも50%以上下落等(建物取得後3年間で課税売上割合が著しく変動)をした場合には、3年経過時の課税期間において、取得時に還付を受けた消費税の仕入税額控除を調整しなければならないこととするというものです。

 また上記とは別に、資本金1千万円の新設法人に対しても規制をかけることとなりました。
 今回の改定により、次の@、Aの期間中に調整対象固定資産を取得し、一定の条件に該当した場合、一定の期間は免税事業者になることができなくなり、簡易課税制度も適用できなくなります。
よって、一般課税(本則課税制度)により消費税の申告を行うことになります。

@ 課税事業者を選択した場合
  →課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間
A 資本金1千万円以上の新設法人を設立した場合
  →新設法人の基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間

 上記@、Aの期間中に、調整対象固定資産の課税仕入を行い、かつ、その仕入れた日の属する課税期間の消費税の確定申告を一般課税(本則課税制度)で行う場合、調整対象固定資産の課税仕入れを行った日の属する課税期間の初日から原則として3年間は、次のことができません。

・免税事業者となることはできません。
・また、簡易課税制度を適用して申告することもできません
 (一般課税により消費税の確定申告を行う必要があります。)

 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物及びその附属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権等の無形固定資産その他の資産で、消費税等に相当する金額を除いた金額が100万円以上のものが該当します。

詳しいことやその他については、最寄の税務署もしくは当事務所までお問合せください。
詳しくはこちら>>
【消費税法改正のお知らせ(国税庁)】

住宅エコポイントの税務上の取り扱いについて

 住宅エコポイントは、国が定めた一定のエコ基準に基づき住宅を新築または改修をした場合に、工事内容に応じたポイントがエコポイント事務局から買主に付与され、商品や金券等と交換もしくは一定の環境団体へ寄附もしくは追加工事の費用への充当(即時交換)ができる制度です。
まず、法人が住宅エコポイントを付与され商品や金券等と交換した場合の税法の取り扱いについてですが、買主は、エコポイントを付与された段階では何ら経済的利益の付与を受けません。実際に交換をすることによって経済的利益の供与を受けることになるため、商品や金券等と交換したタイミングで収益に計上する必要があります。
一方、本体工事で付与されるポイントを追加工事の代金に充当する「即時交換」を行った場合、買主にはポイント相当代金を控除した金額が工事代金として請求されます。
一見すると、これが工事代金の値引きに該当しそうですが、税務上は値引きとはなりません。
というのも、ポイント相当代金は、ポイント事務局から工事施工者に直接支払われる仕組みとなっていますが、実態は、一度買主にポイント相当代金が付与され、その代金を工事費用に充当したと言えるためです。
また、仮に追加工事が固定資産の取得に該当する場合、エコポイント相当代金は、エコカー補助金等と同様に国からの補助金として圧縮記帳の対象になるものと考えることができますが、この住宅エコポイントは国からの「補助金」ではなく、あくまでも「ポイント」であるため、税務上も補助金と扱われません。結果として圧縮記帳の対象にならないようです。
したがって追加工事により新たな固定資産を取得した場合における取得価額は、ポイントを差し引く前の金額となるとともに、ポイント相当代金は雑収入として収益に計上する必要があります。
また、個人が住宅エコポイントの交付を受けた場合、上記と同様に付与された段階では経済的供与を受けていないため、税務上は何の課税関係も生じませんが金券や商品券等と交換した時点で利益の供与を受けたことになるので1ポイント1円のポイント相当額が一時所得として課税の対象となります。

控除対象扶養親族の改正について

平成22年の税制改正で、年齢16歳未満の扶養親族(年少扶養親族)に対する扶養控除が廃止されました。これによって、扶養控除の対象が、年齢16歳以上の扶養親族(控除対象扶養親族)とすることとされました。
給与所得者は平成23年1月分の給料から、個人事業者は平成23年分(平成24年3月15日申告期限)の確定申告からの所得税について影響することになります。

今回の改正で、平成23年分の所得税から適用されるものとして次のものがあげられます。
1 年少扶養親族(扶養親族のうち年齢16歳未満の者)に対する扶養控除が廃止されました。
これに伴い、扶養控除の対象となる控除対象扶養親族は、年齢16歳以上の扶養親族とされました。
2 高校の実質無償化に伴い、16歳から18歳までの特定扶養親族に対する扶養控除の上乗せ部分(25万円)が廃止され、16歳から18歳までの控除対象扶養親族に対する扶養控除の額が38万円(改正前は63万円)とされました。
これに伴い、特定扶養親族の対象範囲が、控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の者とされました。
3 扶養控除の見直しに伴い、居住者の扶養親族又は控除対象配偶者が同居の特別障害者である場合の扶養控除又は配偶者控除の額に35万円を加算する措置に代えて、同居特別障害者に対する障害者控除の額が75万円(改正前は40万円)に引き上げられました。

なお、寡婦・寡夫控除については、今回の改正にかかわらず、これまでの要件に該当すれば、控除対象となります。

平成23年1月1日以降に支払う給与から、源泉所得税の扶養親族等の数の求め方が変わりますので注意が必要です。源泉徴収税額表においては、控除対象配偶者、控除対象扶養親族の人数など(扶養親族等の数)に応じて、税額を計算することとなります。

寄付金控除について

この度は、東日本大震災におきまして被災されました方々に深くお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧をお祈り申し上げます。

さて、被災された方への支援として義援金を支出するということがあります。地震の発生以来、当事務所への問い合わせが増加しておりますので、その際の税務上の取扱についてまとめてみたいと思います。

まず、個人の方が義援金を支出した場合は、下記の@〜Dに該当する特定寄付金に該当する場合は寄付金控除の対象となり、所得金額の40%又はその年中に支出した特定寄付金の額の合計額のいずれか少ない方の金額から2千円を控除した額を所得の金額から控除されます。(住民税においては住民税所得割の10%を上限に5千円を控除した金額)

@国または地方公共団体に対して直接寄付した義援金等
A日本赤十字社の『東北関東大震災義援金』口座へ直接寄付した義援金、新聞・放送等の
 報道機関に対して直接寄付した義援金等で最終的に国又は地方公共団体に拠出されるもの。
B社会福祉法人中央募金会の『各県の被災者の生活再建のための義援金』として直接寄付
 した義援金等
C社会福祉法人中央募金会の『地震災害におけるボランティア・NPO活動支援のための募金』
 (平成23.3.15財務省告示第84号)として直接寄付した義援金等
D@からC以外の義援金等のうち、寄付した義援金等が募金団体を通じて、最終的に国又は
 地方公共団体に拠出されることが明らかであるもの

また、法人においても上記@〜Dに該当する寄付金を拠出した場合、拠出した金額は国等への寄付金として全額損金の額に算入されることになります。
では、実際に寄付金控除又は損金算入の適用を受けるために必要な手続きはどのようなものかというと、
個人においては確定申告書に寄付金控除に関する事項を記載するとともに、義援金等を寄付したことが確認できる書類(領収書等)を申告書に添付するか、提出する際に提示する必要があります。(e-taxにより申告する場合は添付を省略することが可能です)
法人においては別表14(2)寄附金の損金算入に関する明細書の指定寄附金等に関する明細に寄附した義援金等に関する事項を記載し、義援金等を寄付したことが確認できる書類を保存する必要があります。
なお、日本赤十字社や中央募金会の『東北関東大震災義援金』への寄付を郵便振替で行った場合には、郵便窓口で受け取る半券(受領証)をもって寄付したことを証する書類として取り扱うことができます。

その他、義援金等の税務上の取扱については最寄りの税務署または国税庁HPの
『東北地方太平洋沖地震に係る義援金等に関する税務上の取扱いについて(国税庁)』
もしくは『義援金に関する税務上の取扱いFAQ(国税庁)』にてご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

資本的支出と修繕費について

法人税や所得税を申告するうえで頭を悩ませることが多いものとして、修繕費として費用計上(損金経理)できるか、減価償却資産として資産計上しなければならないかという問題があります。この判断が税額に及ぼす影響は大きいと考えられ、また正しい判断ができるようよく理解しておく必要があります。

固定資産を修理、改良等のために支出した金額は、原則として「修繕費」などで費用計上(損金経理)されますが、その内容によっては修繕費用の一部はその固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増やし、使用可能期間(耐用年数)を延長すると認められます。
この価値の増加や耐用年数の延長に対応する部分の金額は「資本的支出」とされ、本体の固定資産の取得価額に加算するか新たな固定資産を取得したものとして資産計上し、減価償却を通じて費用計上(損金経理)されることになります。

資本的支出の算定
1 使用可能期間(耐用年数)が延長されると認められる場合

  支出金額×(支出後に予測される使用可能期間−支出前に予測された使用可能期間)
  ÷支出後に予測される使用可能期間

2 価額が増加すると認められる場合

  支出した直後の価額(時価)
  −通常の維持管理をしている場合に予測される支出直前の価額(時価)

 ※いずれにも該当するときは、いずれか多い金額

資本的支出の例示
 1 建物の避難階段の取付等物理的に付加した部分に係る費用の額
 2 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した費用の額
 3 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに
   要した費用の額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる
   費用の額を超える部分の金額

 修繕費として費用計上(損金経理)できる場合とは、固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち、その固定資産の維持管理や原状回復のために要したと認められる部分の金額であるかどうかで判断します。

修繕費の例示
 1 維持管理等の費用
 @ 建物の移えい又は解体移築をした場合におけるその移えい又は移築に要した費用の額。
 A 機械装置の移設に要した費用(解体費を含む。)の額
 B 地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額。
 C 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う
   床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額。
 D 現に使用している土地の水はけを良くする等のために行う砂利、砕石等の敷設に
   要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した
   費用の額

資本的支出であるか修繕費であるかどうかが明らかでない場合は、次のいずれかに該当すれば、修繕費として費用計上(損金経理)できます。
1 少額または周期の短い費用の損金算入
  @ 支出金額が20万円未満の場合
  A おおむね3年以内の周期で修理や改良が行われている場合
2 形式基準による修繕費の判定
  @ 支出金額が60万円未満の場合
  A 支出金額がその修理、改良等した固定資産の前期末の取得価額の
    おおむね10%相当額以下である場合。
3 継続適用を条件として、資本的支出と修繕費の一定比率による区分
  次のいずれか少ない金額が修繕費とすることができます。
  @ 支出金額の30%相当額
  A その固定資産の前期末の取得価額の10%相当額
4 災害などの場合の特例
  災害などで損傷した固定資産に対する支出金額で、資本的支出であるか修繕費であるか
  明らかでないものは、支出金額の30%相当額


判定にあたっては、『資本的支出と修繕費の判定フローチャート』をご参照ください。

雇用促進税制について

6月22日に成立した税制改正では、新たに雇用促進税制が創設されました。
 この制度は、平成23年4月1日から平成26年3月31日までに開始する各事業年度(個人事業者の場合は平成24年1月1日から平成26年12月31日までの各年)において、一定数の従業員を新たに雇い入れた企業や個人事業者に対して、増加した従業員数一人につき、法人税額、所得税額の20%(大企業は10%)を限度に20万円(大企業は10万円)が法人税または所得税から減税されるというものです。

 ただし、この税制を受けるためには以下の条件をすべて満たす必要があります。
@青色申告法人(者)であること
A従業員を2人以上(大企業は5人以上)、かつ10%以上増加させること
 (従業員は、雇用保険の一般被保険者であること)
B雇用を増やす人数等の予定(目標)を記載した「雇用促進計画」をハローワークへ届け出ること
C当期と前期に会社都合による退職者がいないこと
D当期の給与支払額が、前期よりも、一定以上増加していること

先日公表された国税庁の、『平成23年度法人税関係法令の改正の概要(国税庁HP)』にもこの税制についての詳しい解説があります。

 
この制度では、上記条件に記載している「雇用促進計画」をハローワークに事業年度開始後2カ月以内に届け出し(平成23年4月1日から8月31日までの間に事業年度を開始する事業主の場合は平成23年10月31日までに提出すること)、事業年度終了後2カ月以内に達成状況の確認を求める手続きが必要です。
詳しくは、厚生労働省のウェブサイト・パンフレットでご確認ください。

 
このほかに、雇用の確保を目的に厚生労働省は様々な助成金制度を設けていますので従業員を採用するには助成金等を受けることができるかチェックしておくと良いでしょう。
詳しくは、こちらをご参照ください。

試行雇用(トライアル雇用)奨励金について

 トライアル雇用奨励金とは、業務遂行に当たっての適性や能力などを見極め、その後の常用雇用への移行や雇用のきっかけとするため、職業経験、技能、知識等により就職が困難な求職者を試行的に短期間雇用(原則3か月)する場合に奨励金が支給されるものです。
 トライアル雇用を行うことによって、事業主は当該試行雇用期間に対応して、対象労働者1人当たり月額4万円(最大12万円)の奨励金を受け取ることができ、また対象労働者は、実際に働くことを通じて、企業が求める適性や能力・技術を把握することができます。
トライアル雇用の実施については、まず、求人票を事前にハローワークに提出します。そのうえで、ハローワークよりトライアル雇用を経ることが適当だと思われる対象労働者の紹介を受け、採用面接等を実施し、雇用契約を結びます。
そして、トライアル雇用期間中の労働条件等に関する「トライアル雇用実施計画書」を雇い入れから2週間以内に、対象労働者と十分に話し合い、その同意を得た上でハローワークに提出します。トライアル雇用が終了した、又はトライアル雇用期間中に常用雇用に移行した場合は、トライアル雇用を終了した日の翌日から起算して1か月以内に「トライアル雇用結果報告書兼試行雇用奨励金支給申請書」に前述の計画書の写し、当該労働者の出勤簿・賃金台帳等の写しを添えてハローワークに提出します。
では、トライアル雇用を実施するための条件についてですが、対象となる労働者は以下のような方になります。
@45歳以上の中高年齢者
A40歳未満の若年者等
B母子家庭の母等
C季節労働者
D中国残留邦人等永住帰国者
E障害者
F日雇労働者・住居喪失不安定就労者・ホームレス
そして、奨励金の支給要件については『別紙』の要件をすべて満たす必要があります。
 また、トライアル雇用終了後に「年長フリーター及び30代後半の不安定就労者」又は「採用内定を取り消されて就職先が未決定の学生等を正規雇用する場合は、中小企業は100万円(大企業の場合は50万円)の若年者等正規雇用化特別奨励金が支給されます。
詳しくは、厚生労働省のHPにある『試行雇用(トライアル雇用)奨励金』『若年者等正規雇用化特別奨励金』のページをご覧いただくか、お近くのハローワークへご相談ください。

平成24年源泉所得税の改正のあらましについて

平成24年源泉所得税の改正のあらましについて、ピックアップしたいと思います。

T 介護医療保険契約等に基づいて支払った保険料等について、適用限度額4万円の所得
  控除が創設され、各保険料に応じた生命保険料控除の合計適用限度額が12万円とされ
  ます。

  平成24年1月1日以後に生命保険会社又は損害保険会社等と締結した保険契約等(以下
  「新契約」という)のうち介護(費用)保障又は医療(費用)保障を内容とする主契約又は特約
  に基づいて支払った保険料等については、適用限度額4万円の所得控除(以下「介護医療保
  険料控除」という)が適用されます。

  @ 新契約に係る一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除の適用限度額は、それぞ
    れ4万円とされます。
    それぞれの各保険料の控除額の計算は『別紙』の通りになります。

  A 平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る控除
    平成23年12月31日以前に生命保険会社又は損害保険会社等と締結した保険契約等(以
    下「旧契約」という)については、従前の一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除
    (それぞれ適用限度額5万円)が適用されます。
 
  B 新契約と旧契約の両方について保険料控除の適用を受ける場合の控除額の計算
    新契約に基づく保険料等と旧契約に基づく保険料等の両方の支払について一般生命保険
    料控除又は個人年金保険料控除の適用を受ける場合には、上記@、Aにかかわらず、
    一般生命保険料控除又は個人年金保険料控除の控除額は、それぞれ次に掲げる金額の
    合計額となります。

  イ 新契約に基づいて支払った保険料等につき、それぞれ適用限度額4万円の別紙表の計算
    式により計算した金額

  ロ 旧契約に基づいて支払った保険料等につき、それぞれ適用限度額5万円の別紙表の従前
    の計算式により計算した金額

(新契約と旧契約の両方について控除の適用を受ける場合は旧契約の一般生命保険料控除と旧契約の個人年金保険料控除の限度額が4万円になります)

 例えば、平成24年1月1日以降に死亡保険5万円・介護医療保険3万円・個人年金保険5万円の年間保険料の保険に加入した場合、別紙の新契約の計算式で計算し、一般生命保険料控除額3万2500円、介護医療保険料控除額2万5000円、個人年金保険料控除額3万2500円となり合計控除額は9万円になります。また、平成23年12月31日以前に締結した上記同様の保険の場合では別紙の旧契約の計算式で計算し、一般生命保険料控除額4万5000円、個人年金保険料控除額3万7500円となり合計控除額は8万2500円になります。
 さらに新契約・旧契約両方の上記同様の保険に加入している場合、それぞれの計算式で計算し、一般生命保険料控除額4万円、介護医療保険料控除額2万5000円、個人年金保険料控除額3万7500円となり合計控除額は10万2500円になります。

 この改正は平成24年分以後の所得税について適用されます。


U 自動車などの交通用具を使用して通勤する人が受ける通勤手当の非課税限度額が変わり
  ます。

 現行では、自動車などの交通用具を使用して通勤する人が受ける通勤手当については、その通勤距離に応じた一か月当たりの金額(以下、「距離比例額」という)までが非課税とされています。また、自動車などの交通用具を使用して通勤する人で通勤の距離が片道15キロメートル以上である人が受ける通勤手当については、運賃相当額が距離比例額を超える場合には、運賃相当額(最高10万円)までが非課税とされています。
(運賃相当額とは交通用具を使用して通勤する人が鉄道などの交通機関を利用したならば負担することとなるべき運賃等で通勤に必要な運賃、時間、距離等の事情に照らし最も経済的かつ合理的と認められる通常の通勤の経路及び方法による運賃又は料金の額にも相当する金額をいいます。)

 今回の改正により、運賃相当額が距離比例額を超える場合に、運賃相当額(最高限度:月額10万円)までが非課税とされる措置が廃止されました。これにより、通勤手当の金額が距離比例額を超える場合には、その距離比例額を超える金額については課税の対象となります。

この改正は、平成24年1月1日以後に受けるべき通勤手当について適用されます。

更正の請求期間の延長について

 更正の請求とは、申告書の提出期限後に記載内容に誤りがあることに気がつき、所得金額や税額などが実際より多く申告した場合に税務署に訂正を求めることができる制度です。
今まで更正の請求ができる期間は、法定の申告期限から1年以内とされていましたが、今回の23年度税制改正で更正の請求の期間を現行の1年から5年に延長し、更正の請求を認める範囲も拡大されました。
 
今まで法定申告期限より1年を過ぎてしまっても、職権での減額更正(税額を減らす訂正)を税務署長にお願いする「嘆願」という方法がありましたが、これは法的に確定した制度ではありませんので、必ず減額更正されるというものではありませんでした。
一方で、税務署が納税者に対し増額更正(税額を増やす訂正)ができる期間は3年とされており、「嘆願」という不透明な実務を解消することや、納税者の救済、課税のバランスを図るなどの観点から、更正の請求期間を5年に延長するとともに、税務署が増額更正できる期間も3年から5年に延長されました。
 この改正により、納税者による修正申告・更正の請求、税務署による増額更正・減額更正の期間制限がすべて一致することになりました。
なお、この改正は平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。

詳しくは『更生の請求期間の延長等について(国税庁)』

消費税のいわゆる「95%ルール」の見直しについて

 昨年の平成23年6月に消費税法が改正され、いわゆる「95%ルール」の見直しがされました。平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されるので注意が必要です。
簡易課税制度を選択せずに一般課税で消費税の申告を行う事業者のうち、当課税期間における課税売上割合が95%以上の事業者は、課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除することができることとされていました。しかし今回の改正では、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から当課税期間における課税売上割合が95%以上かつ課税売上高が5億円以下の場合にのみ全額を控除することができることとされました。(消費税法30条A)
 したがって、当課税期間における課税売上高が5億円超の場合、又は、課税売上割合が95%未満の場合には、仕入控除税額の計算を個別対応方式若しくは一括比例配分方式のいずれかにより行うこととなります。
 当課税期間が1年に満たない場合には、当課税期間の課税売上高を当課税期間の月数で除し、これに12を乗じて算出した金額(年換算した金額)で判定します。


詳しくは、国税庁ホームページの95%ルールの適用要件の見直しを踏まえた仕入税額控除の計算方法等に関するQ&A『基本的な考え方編(国税庁・PDF)』『具体的事例編(国税庁・PDF)』をご参照下さい。

法人の減価償却制度の改正について

平成23年12月改正により法人の減価償却制度に関する規定が改正されました。その規定は平成24年4月1日以後に終了する事業年度の法人税から適用され、平成24年4月1日以後に取得される減価償却資産の定率法の償却率について、定額法の償却率を2.5倍した償却率(以下、250%定率法といいます。)から定額法の償却率を2倍した償却率(以下、200%定率法といいます。)に引き下げられました。
また、定率法を採用している減価償却資産に資本的支出(追加償却資産)を行った場合において、その資本的支出を行った事業年度の翌事業年度開始の時において、その時における減価償却資産と追加償却資産の合計額を取得価額とする一の減価償却資産を新たに取得したものとするという特例について、今回の改正により平成24年3月31日以前に取得した減価償却資産と平成24年4月1日以後に取得した追加償却資産については償却率が異なるため、除外するなどの所要の措置が講じられました。
200%定率法による償却は、平成24年4月1日以後に取得される減価償却資産から適用されますが、そうすると平成24年4月1日以前に開始し、かつ、同日以後に終了する事業年度(以下、改正事業年度といいます。)において取得された減価償却資産が複数ある場合、その取得の日に応じて200%定率法と250%定率法のそれぞれの償却方法により償却を行う必要が生じます。
 そこで、改正事業年度においてその有する減価償却資産について定率法を選択している場合には、平成24年4月1日からその事業年度終了の日までの期間内に取得された減価償却資産については、その減価償却資産を平成24年3月31日以前に取得されたものとみなして、250%定率法により償却することができる特例が措置され、その特例を選択するに当たり所轄税務署長への届出等の手続きは不要となっています。
 上記とは反対に、平成19年4月1日から平成24年3月31日までの間に取得された減価償却資産について定率法を選択している場合において、平成24年4月1日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに届出書を提出することにより改正事業年度又は平成24年4月1日以後最初に開始する事業年度のいずれかの事業年度以後の各事業年度における償却限度額の計算について、その減価償却資産のすべてを平成24年4月1日以後に取得したものとみなして200%定率法により償却することができることとされました。
 定率法によって償却している減価償却資産について、各法人にあった償却率を検討する必要があると思います。

詳しくはこちら『平成23年12月改正 法人の減価償却制度の改正に関するQ&A(国税庁)』まで

エネルギー環境負荷低減推進税制(グリーン投資減税)について

平成23年税制改正により、省エネや再生エネルギーの利用促進に寄与する設備投資を税制面から後押しするグリーン投資減税が創設されました。
グリーン投資減税とは青色申告書を提出する法人又は個人が、平成23年6月30日から平成26年3月31日までの間に、エネルギー起源CO2排出削減または再生可能エネルギー導入拡大に相当程度の効果が見込まれる設備等の取得等をして、これを1年以内に国内にある事業の用に供した場合には、取得価格の30%の特別償却(中小企業者等については、取得価格の7%の税額控除との選択適用)ができる措置をいいます。
さらに平成24年税制改正により、平成24年5月29日からグリーン投資減税の対象設備(太陽光・風力発電設備)の定義が変わりました。
 これにより、平成24年5月29日から取得した太陽光発電設備と風力発電設備で所定の要件を満たせば、取得価額を初年度に100%即時償却が可能となりました。
具体的な所定の要件としては、グリーン投資減税の対象設備である太陽光発電設備と風力発電設備のうち、
@平成24年5月29日から平成25年3月31日までの間に設備を取得等をする 
A電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法第3条第2項に規定する認定発電設備に該当するものに限る
Bその取得等した日から1年以内に事業の用に供した場合
であり、上記の既存のグリーン投資減税の内容に加え、事業の用に供した日を含む事業年度において、取得価格の全額を即時償却(100%を初年度に償却)することができるようになりました。

 
詳しくはこちら 『平成24年度税制改正に伴うエネルギー環境負荷低減推進税制(グリーン投資減税)の変更点 概要(資源エネルギー庁)』まで

特定役員の退職金の2分の1課税廃止について

 平成24年度税制改正により、平成25年1月1日以降に支払われる、勤続年数が5年以下の役員等への退職金(特定役員退職手当等)について、2分の1課税が廃止されることになりました。この改正は、公務員の天下りを規制する目的で導入されたものですが、一般企業の役員にも該当することになりますので注意が必要です。

 退職金は、一般的に長期間にわたる勤務の対価を一時にまとめて受取るものであること、また退職後の生活保障を担うものであること等の理由により、所得税法上、給料・報酬とは異なる性質を有する所得(退職所得)として取り扱われています。
退職所得の金額は、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額)−退職所得控除額)×1/2=退職所得の金額

改正後では、役員等勤続年数が5年以下である人が支払いを受ける退職金のうち、その役員等勤続年数に対応する退職金として支払を受けるものについては、次のように計算します。
(収入金額(源泉徴収される前の金額)−退職所得控除額)=退職所得の金額

上記のように、2分の1ができなくなるため、退職所得の金額が高くなり、増税となります。

 退職所得控除額は、退職者の勤続年数をもとに計算され、勤続年数20年までは1年当たり40万円、20年を超える勤続年数に関しては1年当たり70万円として計算します。
退職所得控除額は、次のように計算します。
勤続年数(=A)とした場合、
20年以下の場合 → 40万円×A (80万円に満たない場合には、80万円)
20年超の場合  → 800万円+70万円×(A−20年)
勤続年数の期間は、原則として、退職金の支払者の下で退職の日まで引き続き勤務した期間です。長期の欠勤や病気での休職の期間も、勤続年数に含めます。勤続年数の期間に1年に満たない端数があるときは、1年に切り上げます。

また上記とは別に、地方税法についても改正され、退職所得に係る住民税の計算上、従来認められていた退職所得の金額の10%相当額の税額控除が、平成25年1月1日以降廃止されます。これは特定役員とは関係なく、退職所得の金額がある人に対して全員が対象となります。
そのため、勤続年数が5年以下の役員が受取る退職金に関しては、大幅に増税されることになります。

詳しくは、こちら『特定役員退職手当等Q&A(国税庁)』を参照ください。

年末調整・本年の変更点について

 今年も年末にさしかかり、年末調整の時期が近づいてきました。そこで年末調整の変更点についてお知らせしたいと思います。
 そもそも『年末調整とは何か?』ですが、年末調整とは給与の支払者によって源泉徴収された1年間の合計額とその年の給与総額について納めなければならない税額(年税額)の調整を行うことをいいます。また、年末調整の対象となる人は1年を通じて勤務している人や年の途中で就職し、年末まで勤務している人等ですが本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人や2か所以上から給与の支払を受けている人で、他の給与の支払者に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人や、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整を行うときまでに提出していない人は対象になりません。一の勤務先から受ける給与以外に所得がないか、給与以外の所得があってもその額が少額であるという人は、年末調整を行い、税額の精算が済んでしまうと確定申告等の手続きを行う必要がなくなるので、年末調整は非常に便利な手続きといえます。
 さて、本年の変更点についてですが、以下のようなものがあります。
・生命保険料控除が改組され、各保険料控除の合計摘要限度額が12万円とされました。

平成24年1月1日以後に生命保険会社及び損害保険会社等と締結した保険契約等(以下「新契約」といいます。)のうち介護(費用)保障又は医療(費用)を内容とする主契約又は特約に基づいて支払った保険料等(以下「介護医療保険料」といいます。)について、適用限度額4万円として介護医療保険料控除を受けることができるようになりました。また、新契約に係る一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除については適用限度額がそれぞれ4万円とされ、控除額の計算は以下のとおりとされました。
別表@新契約に係る控除額計算表

 平成23年12月31日以前に生命保険会社又は損害保険会社等と締結した保険契約等(以下「旧契約」といいます。)については従前の一般保険料控除及び個人年金保険料控除が適用され、適用限度額が5万円となります。
別表A旧契約に係る控除額計算表

 新契約に基づく保険料等と旧契約に基づく保険料等の両方の支払について一般生命保険料控除又は個人年金保険料控除の適用を受ける場合の控除額は、新契約に基づいて支払った保険料等につき、別表@の計算式により計算した金額と旧契約に基づいて支払った保険料等につき、別紙Aの計算式により計算した金額との合計額(上限4万円)とされました。
 
その他、納期の特例を受けている源泉徴収義務者の納期限の一部変更や自動車等の交通用具を使用して通勤する人が受ける通勤手当の非課税限度額の変更があり、年末調整事務を担当する方は国税庁のホームページ『平成24年分年末調整がよくわかるページ』等によりもう一度確認をされるとよいでしょう。

復興増税について

 平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布され、『復興特別所得税』及び『復興特別法人税』が創設されました。『復興特別所得税』については、平成25年から平成49年までの各年分の基準所得税額に2.1%を、『復興特別法人税』については、平成24年4月1日以後に開始する事業年度から3年間の各事業年度分の基準法人税額に10%の税率を乗じて計算した税額を所得税・法人税と同じ時期に申告・納付することとされています。また、個人の住民税においては平成26年6月から徴収される税額について、平成35年までの10年間、均等割が1,000円引き上げられます。
まず、復興特別所得税について、復興特別所得税の課税対象となるのは一部を除く居住者の場合、すべての所得に対する所得税額(非居住者においては国内源泉所得に対する所得税額)となっており、所得税の申告とあわせて申告することとなります。
 また、給与所得等に係る源泉徴収においても、所得税の源泉徴収に併せて源泉徴収すべき所得税額の2.1%の復興特別所得税を徴収することとなるため、『平成25年分源泉徴収税額表(国税庁HP)』に基づいて徴収しなければなりません。税理士等の報酬等に対してもこれまでの10%の源泉徴収とあわせて2.1%の復興特別所得税を徴収することとなるため注意が必要となります。
 復興特別法人税においては、復興特別法人税の課税標準法人税額は、一定の場合を除き、各課税事業年度の基準法人税額とされており、法人税申告書別表一(一)を使用する法人の場合、その基準法人税額は『別表一(一)「2」』欄−別表一(一)「3」欄+別表一(一)「5」欄』で計算された金額となり、もし、赤字等により基準法人税額がない場合は、復興特別法人税は課税されず、また復興特別法人税申告書を提出する必要はありません。
 また、預金利息等に対して源泉徴収された復興特別所得税の額は、復興特別法人税の額から控除することとされていますが、控除しきれない復興特別所得税の額がある場合には、復興特別法人税申告書を提出することにより、還付を受けることができます。
その他復興増税についてのあらましについて、復興特別所得税について『個人の方に係る復興特別所得税のあらまし(国税庁)』、復興特別法人税については『復興特別法人税のあらまし(国税庁HP)』でご確認ください。

皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は3年を経過したにも拘らず先行きの見えない欧州危機、中国の輸出の伸び悩み、アメリカの金融破綻・高い失業率・・・という経済状況の中、世界各国で政権が交代し続々と新しい指導者が誕生しました。また、中国との尖閣問題、韓国との竹島問題が新たな外交問題となり、日本の輸出関連企業が大打撃を被ることになりました。
 わが国国内においては、3年3ヶ月続いた民主党政権が破れ、自民党圧勝の下、年末の12月26日には安倍内閣が発足しました。安倍政権への期待感から、2013年の大発会では日経株価は「震災前」を上回り1万700円台を回復し、為替も円安87円台後半となり、自動車や電機などの輸出関連株が全面高になっているようです。
 経済再生を最優先に取り組むというものの、まだ期待感だけで、経済がよくなったという実感が全くありません。シャープ、パナソニックの大幅赤字そしてリストラと、大手の下請け企業をクライアントにもつ我々としては、戦々恐々たるものがあります。
 巡回監査と決算を主たる業務とする私たちの仕事の内容は、基本的には関与先の業績には大きく左右されませんが、一昨年の秋頃より個人事業の廃業、法人の解散清算の声を聞くことが多くなり、また、会社内部での分裂、親族間のトラブルが増えてきたように思います。また、弁護士さん経由での相続税の申告業務も遺産が未分割状態のものが急増してまいりました。やはり、景気が悪く将来が見えないことに対する不安感が原因でしょうか。
 戦後、日本人は欧米型資本主義の考え方に影響されてきました。会社は株主のためにあり、株主の価値を最大化するために売上や利益を何よりも重視するもので、自己の利益を最優先し他人を犠牲にする思想そのものです。最近、各会社では経営計画を立案し、また様々な手法を用いて事業の改善を図ろうとする試みが多く見られますが、大きな成果が出ておりません。この原因はおそらく経営者の考えが知らず知らずのうちに欧米型資本主義的になってしまっており、顧客の視点から外れてしまっていることにあるのではないでしょうか。顧客重視とは、自己の利益のためではなく、経営者の心の中に、安心で安らぎの住まいを提供したい、安心安全で美味しいものを提供したい、苦しんでいる方のお手伝いをしたい、・・・とか、本当に顧客を大切にしたいという強い「願い」が必要だと思います。
 今年の干支は「巳」で、「起こる。始まる。」年です。また、脱皮をすることから「復活と再生」の年でもあるといわれます。まさに変革の年であるわけです。自然淘汰が加速する年だと思います。高度成長期はとうに過ぎ去ったにも拘らず、従来の考え方や価値観をもち続ける企業は急速に衰退の道を進むことになると思います。
今年から、他人のことを思いやり、助け合い、分け与え、個々人それぞれが尊敬しあえる共存共栄の社会が始まります。新しい価値観に切り替えて、積極的に事業に取り組んでいかれる皆様のよきパートナーとして、私たちは全力で取り組んでまいる所存であります。
今年は皆様にとりまして、よい年でありますように・・・     祈。

中嶌大会計事務所 所長   中嶌 大

所得拡大促進税制について

 所得拡大促進税制とは、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの開始事業年度に法人や個人事業主が従業員への給与を増額した場合に、その増加額の10%分(法人税額の20%が限度額)を法人の法人税額や個人事業主の所得税額から控除できるという制度です。平成26年度税制改正において適用要件が緩和され、適用期限についても2年間(平成30年3月31日まで)延長されました。
適用を受けるためには青色申告者である必要があり、以下の要件をすべて満たす必要があります。

@基準事業年度(※1)より給与等支給額(※2)を2~5%(※3)増加させていること
A給与等支給額が前年度より増加していること
B平均給与等支給額(※4)が前年度より増加していること
(※1)基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日の前日を含む事業年度をいいます。
(※2)給与等支給額とは当期の所得の計算上必要経費又は損金に算入される給与等で、雇用者に対して支給するものをいいます。
(※3)平成27年4月1日前の開始事業年度(平成26年3月期決算法人を含む)は2%以上
   平成27年4月1日から平成28年3月31日までの開始事業年度は3%以上
   平成28年4月1日から平成30年3月31日までの開始事業年度は5%以上
(※4)平均給与等支給額とは、年間の給与等支給額÷(月別給与等支給対象者数×月数)をいいます。

 適用に当たっては、確定申告書等に税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付する必要がありますが、雇用促進税制(平成26年度税制改正で適用期限を2年間延長)のように税務申告より前に特段の手続きを行う必要はありません。雇用促進税制との重複適用は不可であり、選択適用をすることになります。また、新設法人においてもは基準事業年度は設立前なのでありませんが、調整計算を行うことにより適用を受けることができます。
詳しくはこちら(経済産業省HP)

「領収証」等に係る印紙税の非課税範囲が拡大について

 事業者が作成する領収証やレシートなどの「金銭又は有価証券の受取書」に係る印紙税については、平成26年4月1日以降に受取金額が5万円未満のものについて非課税となります。(平成26年3月31日までは、記載された金額が3万円未満のものが非課税です)
 また、「不動産の譲渡に関する契約書」及び「建設工事の請負に関する契約書」のうち、一定の要件に該当する契約書の印紙税を軽減する措置が平成30年3月31日まで延長され(第1号の1文書及び第2号文書関係)、平成26年4月1日以降に作成されるものについては、印紙税の軽減措置が拡充されることとなりました。
くわしくはこちら『「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の 印紙税の軽減措置の延長及び拡充等』(国税庁HP)

 第17号文書の金銭又は有価証券の受取書であっても、受け取った金銭などがその受取人にとって営業に関しないものである場合には、非課税となります。
 営業というのは、一般に、営利を目的として同種の行為を反復継続して行うこととされており、おおむね次のように取り扱っています。
(1) 株式会社などの営利法人の行為は、その営利法人が直接作成する株式払込金領収書などを除いて営業になります。
(2) 公益社団法人・公益財団法人などの公益法人の行為は、すべて営業になりません。
 また、一般社団法人・一般財団法人は、剰余金の分配金の分配等をすることができないため、その行為も営業になりません。
(3) 協同組合など会社以外の法人の行為は、次のようになっています。
 法令の規定などにより利益金又は剰余金の分配などをすることができることになっている法人の場合に、出資者以外の者との行為は営業になり、出資者との行為は営業になりません。
(4) 人格のない社団の行為は、次のようになっています。
 公益及び会員相互間の親睦等の非営利事業を目的として設立されている場合には、営業になりません。
 その他の人格のない社団が作成する受取書で、収益事業に関して作成するものは、営業になります。
(5) 個人の場合、「商人」としての行為は営業になり、事業を離れた私的日常生活に関するものは営業になりません。
 なお、店舗などの設備がない農業、林業又は漁業を行っている者が自分の生産物を販売する行為や医師、歯科医師、弁護士、公認会計士などの行為は、一般に営業に当たらないとされていますので、これらの行為に関して作成される受取書は営業に関しない受取書として取り扱われます。

 印紙税は明治時代からある古い税目であり、課税根拠は課税文書が作られる背景には取引があり、それに伴う経済的利益の存在を推定することが可能で、税を負担する能力があるからなどといわれていますし、文書を作成することによって取引事実が明確化し法律関係が安定化することに着目して広範囲な文書に軽度の負担を求める文書課税などといわれています。
 明治時代からある古い税目が現在の社会の中で必ずしも当てはまっているかどうかの議論はあるようですが、課税文書に印紙を貼らなかった場合には、本来納付すべきだった印紙税の3倍の過怠税を徴収されることがありますので注意が必要です。
くわしくはこちら『印紙税の手引き(国税庁HP)』

年末調整について

平成25年も残すところあと1か月となりました。今回の大ちゃんニュースのテーマはこの時期によくお問い合わせをいただく年末調整です。
 年末調整とは勤務先から貰う給与について支給期に源泉徴収された所得税について過不足の調整を行うことです。年末に行われることから年末調整といわれています。年末調整は給与所得について行われるもので、事業所得等については年末調整という手続きはなく、翌年確定申告を行うことになります。
○配偶者特別控除
 配偶者特別控除とは、配偶者に38万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて、一定の金額の所得控除を受けることができるものです。
配偶者控除は38万円を超える所得がある場合、配偶者控除を受けることができません。しかしながら38万円を超える所得がある場合にも、その所得金額に応じて3〜38万円の控除を受けることができます。配偶者特別控除を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
(1) 控除を受ける人のその年における合計所得金額が1千万円以下であること。
(2) 配偶者が次の5つのすべてに当てはまること。
イ. 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません)。
ロ. 納税者と生計を一にしていること。
ハ. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じ一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
ニ. 他の人の扶養親族となっていないこと。
ホ. 年間の合計所得金額※が38万円超76万円未満であること。
※合計所得金額についてはこちら(国税庁HP)
配偶者特別控除の控除額は配偶者の合計所得金額に応じて控除額が違います。具体的な控除額についてはこちらでご確認ください。
 実際に配偶者特別控除を受けるための手続きについては、勤務先より配られる「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に配偶者の氏名及び配偶者の収入額等を記入し、提出することにより適用を受けることができます。また、確定申告をすることによって適用を受けることもできます。

○生命保険料控除
 生命保険料控除とは、納税者が一定の生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った(本人が支払ったものに限る)場合に、一定の金額の所得控除を受けることができる制度です。平成24年1月1日以後に締結した保険契約等に係る保険料と平成23年12月31日以前に締結した保険契約等に係る保険料では、生命保険料控除の取扱いが異なります。それぞれの控除額についてはこちらをご確認ください。
生命保険料控除の対象とされるためには、保険金、共済金その他の給付金の受取人のすべてが所得者本人または所得者の配偶者や親族となっていることが必要となります。
また、保険期間が5年未満の生命保険などの中には、控除の対象とならないものがあるので注意が必要です。
生命保険料控除を受けるための手続きについては、配偶者特別控除と同様、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」にその保険契約の内容や支払金額を記入し、10~11月頃に各保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」を添付することにより受けることができます。また、確定申告をすることによって適用を受けることもできます。

○社会保険料控除
 社会保険料控除とは、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を給与から控除された場合又は支払った場合に受けることができる控除です。自分にかかる社会保険料はもちろん、生計を一にする配偶者や子などのその他の親族が負担すべき社会保険料を自分が払った場合にも控除を受けることができます。
この場合、その社会保険料を生計を一にする配偶者やその他の親族ではなく、自分が負担していなければならないため注意が必要です。
生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料について控除を受ける場合の手続きについては、「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」にその社会保険の種類や支払金額を記入し、国民年金については「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」を添付することにより受けることができます。

今回は、特にご質問の多い控除についてピックアップいたしましたが、年末調整の詳しい内容や手続きについてはこちら(国税庁HP)でご確認ください。

ふるさと納税制度について

 ふるさと納税制度とは地方自治体に対する寄附金のうち、2,000円を超える部分について、個人住民税の概ね1割を上限として所得税と合わせて控除される制度です。
 たとえ一部であっても納税者が自分の意思で納税先を選択することができ、ふるさと納税を通じて故郷の大切さ、自分たちの生活を支えてくれている自然の恵みへの感謝、育ててくれた人々への恩返しなどの思いを反映することができます。
 また、ふるさと納税を受けたい自治体はその出身者や関心を持ってくれそうな人々に自治体の魅力をアピールしたり、ふるさと納税されたお金がどのように使われ、それによってどのような成果があるかなどの効果的な情報提供を行うようになるなど、自治体の意識の進化が期待できます。
 「ふるさと」の概念について、生まれた場所や育った場所など様々な議論がされましたが、その定義が難しく、また定義したとしてもその確認をすることが困難で事務手続きが煩雑になることや貢献、応援したいと思う「ふるさと」のイメージは人により様々であるため納税者の意思を尊重すべきであるなどの理由で納税者が自由に選択できるようになっています。
 対象となる地方公共団体は全国の都道府県と市町村の両方で、一つに限らず複数でも構いません。
 「納税」という名称をとっていますが、実際は「寄附金控除」の方式によります。控除を受けるためには都道府県・市区町村発行の領収書等を添付した所得税の確定申告書を税務署に提出しなければなりません。
 2,000円の最低負担額で寄附(ふるさと納税)ができる上限金額についてよく「住民税の1割程度」といわれていますが、実際は所得により違いがあるものの住民税所得割の約11%〜20%程度になります。
 また、2,000円の最低負担額で寄附(ふるさと納税)ができる上限金額は、所得税率の高い人ほど増えていきますが、寄附(ふるさと納税)をすることにより所得税率が寄附をする前の所得税率と比べて下がる人は、2,000円以上の負担となるケースもありますので注意が必要です。
 ふるさと納税制度で自分は控除額がいくらになるのか、またいくらまでなら2,000円の最低負担額で寄附(ふるさと納税)ができるのかなど、個人の所得によって違いますので、お知りになりたい方は当事務所にご相談ください。
 ふるさと納税制度の導入から5年が経過しましたが、まだまだ使い勝手が悪いとの指摘も多いことから、総務省は9月13日にふるさと納税制度の手続きについてコンビニエンスストアでの決済の導入や税額控除手続きの簡素化など運用を改善するよう通達を出しました。
様々な地方公共団体でふるさと納税についてホームページ上に載っていますし、ふるさと寄附金の税額のモデルケースやふるさと納税についてまとめているホームページもありますのでそれらも参考にしてください。

『2,000円を除く全額が控除できる寄附金額の一覧(目安)(総務省HP)』   
『ふるさと納税ポータルサイト 「ふるさとチョイス」』


相続税の改正について

平成25年度税制改正において、相続税の改正が行われることになりました。
改正の施行時期は、そのほとんどが平成27年1月1日以後の相続又は遺贈から適用となります。
主な改正内容は、@基礎控除額の引き下げA税率構造と最高税率の引き上げB小規模宅地等の相続税の課税価格の計算の特例の改正C未成年者控除等の拡充です。

@基礎控除額の引き下げについては、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈により、相続税の基礎控除について下記のとおり引き下げられます。
 【改正前】 ⇒ 5000万円+1,000万円×法定相続人数
 【改正後】 ⇒ 3000万円+  600万円×法定相続人数

A相続税の最高税率が6億円超の部分について55%へと引き上げられます(改正前は50%)。さらには、1億円超3億円以下は40%とされていた税率を2億円超3億円以下の部分について45%に引き上げる税率構造の見直しも行われます。

B基礎控除の引き下げと税率構造の見直しによって大きな影響を受ける都心部の土地所有者への課税強化の影響を緩和するため、小規模宅地等の特例の適用面積拡大と要件緩和を行うこととしています。
特定居住用地の適用面積については、240uから330uに拡大されます。(平成27年1月1日以後の相続又は遺贈より適用)
また、特例の対象として選択する宅地等のすべてが特定事業用等宅地等(400u)及び特定居住用宅地等(330u)である場合には、完全併用が可能になり非常に有利になります。
 要件緩和については、平成26年1月1日以後の相続・遺贈から適用となります。2世帯住宅を前提に、その家族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分が特例の対象となります。また、老人ホームなど「被相続人に介護が必要なため入所したものであること」「当該家屋が貸付け等の用途に供されていないこと」の2つを満たせば適用対象とするとしています。

C相続税から控除される未成年者控除及び障害者控除の控除額について次のように拡大されることになります。平成27年1月1日以後の相続又は遺贈より適用となります。
 未成年者控除については、20歳に達するまでの年数1年につき10万円(改正前6万円)。
 障害者控除については、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(改正前6万円)、特別障害者については、20万円(改正前12万円)の控除額となります。

少額投資非課税制度(NISA・ニーサ)について

平成25年税制改正において、家計の安定的な資産形成の支援と経済成長に必要な成長資金の供給拡大の両立を図る観点から、平成26年1月より少額投資非課税制度(NISA・ニーサ)が始まることになりました。
 少額投資非課税制度とは平成26年1月1日から平成35年12月31日までの間に、年間100万円を上限として専用の非課税口座で新規に取得した上場株式や公募株式投資信託について、その配当と譲渡益を取得した年から最長で5年間、非課税にする制度のことです。
 この制度は、日本に住んでいる、その年の1月1日時点で20歳以上の者等が利用することができ、利用するためには銀行や証券会社等に専用の口座を開設する必要があります。
この非課税口座は1人1口座(1金融機関)で、口座を開設した後最初の4年間は他の金融機関へ変更することができません。
 非課税口座に受け入れることのできる金融商品は、上場株式、外国上場株式、公募株式投資信託、外国籍公募株式投資信託、上場株式投資信託(ETF)、上場REIT(不動産投資信託)等で、公社債や公社債投資信託は受け入れることができません。また、既に特定口座等で保有している上場株式等を非課税口座に移管することもできませんし、口座を開設した金融機関によって取扱商品が異なるため、当該金融機関の取扱のない商品を受け入れることもできません。
 配当や売却益が年間100万円まで非課税になるこの制度ですが、もし、口座内の上場株式等を売却し損失が発生した場合、当該損失はなかったものとみなされ、損失の繰越控除や他の口座(特定口座等)で生じた譲渡益や配当と損益通算することはできません。また、その年の非課税制度利用額が利用限度額(非課税枠)の100万円に満たなかったとしても、未使用分の非課税枠を翌年に繰り越すことはできません。
また、非課税期間5年間が終了し課税口座へ移管する場合、非課税期間終了時点での時価がその金融商品の取得価額を大きく下回っていたとしても終了時点での時価が取得価額となり、課税口座に移管後売却する場合、仮にその金融商品の取得価額を下回っていて損をしている場合でも、移管時の時価に基づいて課税されることになるため注意が必要です。
 たとえば金融商品を100万円で購入し、非課税期間の5年間が終了した時点の時価が60万円であった場合、課税口座へ移管し70万円で売却すると、100万円−70万円=30万円の損失ですが、移管時の時価を取得原価とするため70万円−60万円=10万円が利益と見なされ課税されることになります。

現在、証券会社等は積極的にCM等でこの口座の開設を呼び掛けていますが、口座の開設等を含め慎重に対応することが必要ではないかと思います。
詳しい内容は『NISA(少額投資非課税制度)に関するQ&A(日本証券業協会)』まで

教育資金の一括贈与の非課税措置について

 平成25年度の税制改正で、孫への教育資金の一括贈与を非課税とする措置が講じられることになり、3月29日に参議院本会議にて法案が可決成立されました。
資産を持つ高齢者世代から若い世代への資金移転を促し、これによって子の世代の教育費負担が減り、その分消費を活性化させる効果があると期待されています。
 
改正の内容は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に、祖父母から孫など直系の親族(30歳未満の者に限ります。)に教育資金を一括贈与した場合、贈与を受ける1人につき1500万円まで贈与税が非課税とされるものです。また、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円が限度となっています。
対象となる教育資金等は、入学金や授業料、塾、習い事、音楽やスポーツ、英会話など幅広いもので、具体的な範囲は文部科学大臣が定めるものとなっています。
 手続については、金融機関経由で納税地の税務署長に所定の申込書を提出しなければなりません。贈与を受ける者の名義で口座を開設した後、教育資金の支払いに充てるために口座から金銭を引出す場合には、それぞれの方法ごとに定められた期限内に、金融機関に領収書等を提出する必要があります。詳しくは金融機関でお確かめください。
孫が30歳になった時に口座に資金が余っていた場合は、その時点で贈与されたものとして贈与税が課せられることになります。

詳しくは、『平成25年度税制改正の大綱(2/5) 二.資産課税 3.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(財務省HP)』をご覧ください。


教育資金の一括贈与の非課税措置について

 平成25年度の税制改正で、孫への教育資金の一括贈与を非課税とする措置が講じられることになり、3月29日に参議院本会議にて法案が可決成立されました。
資産を持つ高齢者世代から若い世代への資金移転を促し、これによって子の世代の教育費負担が減り、その分消費を活性化させる効果があると期待されています。
 
 改正の内容は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に、祖父母から孫など直系の親族(30歳未満の者に限ります。)に教育資金を一括贈与した場合、贈与を受ける1人につき1,500万円まで贈与税が非課税とされるものです。また、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円が限度となっています。
対象となる教育資金等は、入学金や授業料、塾、習い事、音楽やスポーツ、英会話など幅広いもので、具体的な範囲は文部科学大臣が定めるものとなっています。
 手続については、金融機関経由で納税地の税務署長に所定の申込書を提出しなければなりません。贈与を受ける者の名義で口座を開設した後、教育資金の支払いに充てるために口座から金銭を引出す場合には、それぞれの方法ごとに定められた期限内に、金融機関に領収書等を提出する必要があります。詳しくは金融機関でお確かめください。
孫が30歳になった時に口座に資金が余っていた場合は、その時点で贈与されたものとして贈与税が課せられることになります。

詳しくはこちら『平成25年度税制改正の大綱(2/5) 二.資産課税 3.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置(財務省)』まで

追記:
文部科学省からも『教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置』の制度の概要とQ&Aが公表されました。こちらもご確認ください。

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