寒い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
インフルエンザも流行しているようですがインフルエンザウイルスは乾燥した環境を好むようですので、室内の保湿も忘れずにしっかりと行いましょう!
今回のテーマは平成29年度の確定申告からいよいよ導入となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について。以前にも一度お伝えさせて頂きましたが、もう少し具体的な解説をさせて頂きます。

まずは以前のおさらいからしていきましょう。

◆ 医療費控除とは
 自分や家族のために支払った医療費等の実質負担額が、年間10万円(所得金額が200万円未満の人は「所得金額×5%」の額。)を超えた場合、その超えた金額をその年の所得から差し引くことができる制度。 控除できる金額の上限は200万円。 ただし、保険金などで補てんされた場合はその金額を差し引かなければいけません。(※未払い医療費は含まない。)

〈計算式〉
支払った医療費−(注)100,000円=控除額(2,000,000円を限度)
(注)所得金額200万円未満の人は総所得金額×5%を限度

◆ セルフメディケーション税制とは
 健康の維持増進・疾病の予防として一定の取組を行う人が、その年に自分や家族のために購入したOTC医薬品の対価の額の合計が12,000円を超えるときは、その超える部分の金額(88,000円を限度とする。)を総所得金額から控除することができる制度。

〈計算式〉
支払った特定一般用医薬品の対価の額−12,000円=控除額(88,000円を限度)

◆ 医療費控除とセルフメディケーション税制との関係性について
 結局のところ、医療費控除とセルフメディケーション税制はどう違うのか、医療費控除とセルフメディケーション税制の関係について詳しく解説していきましょう。

・医療費控除とセルフメディケーション税制はいずれか選択適用である。(重複適用不可
・どちらの規定も年末調整では適用出来ず、確定申告をする必要がある
・セルフメディケーション税制では、適用を受ける人(確定申告を行う人)が(注)一定の取組を実施する必要がある。(家族全員が行う必要はありません。)
・医療費控除もセルフメディケーション税制もどちらも所得控除であり、税額控除でないため、納めた税金がない場合には税金が還付されることはない。
・医療費控除は最大2,000,000円まで、セルフメディケーション税制は最大88,000円までの所得控除が可能。

(注)一定の取組(いずれかひとつでよい)


なお、一定の取組を証明する書類である領収書又は結果通知表には次の事項の記載が必要である
・「一定の取組」を行った者の氏名
・「一定の取組」を行った
・「健康診断健診」などの事業を行った保険者、その事業者若しくは市町村の名称又は診察を行った医療機関の名称若しくは医師の氏名
まず着目する点として、適用できるのは医療費控除かセルフメディケーション税制のどちらか一方の選択適用となっていますので、有利な方を選択します。
具体例を使って控除額を計算していきましょう。


【設例1】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       60,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     80,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。

【答】
(1) 医療費控除
(20,000円+60,000円+80,000円)−100,000円=60,000円

(2) 医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(60,000円+80,000円)−12,000円=128,000円>88,000(限度額)∴88,000円

(3) 医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒88,000円
  
セルフメディケーション税制が導入される前ですと、(1)の医療費控除額の60,000円しか所得控除されなかったのに対し、今回は88,000円の所得控除ができる結果となりました。


【設例2】
居住者甲さんは平成29年中に次の支出がありますが、医療費控除はどうなりますか。
@ 甲の歯の治療費           20,000円
A 甲のOTC医薬品の購入費       30,000円
B 甲の妻のOTC医薬品の購入費     40,000円
※1.甲は平成29年中にインフルエンザの予防接種をしているが、妻はしていない。
※2.甲と甲の妻は生計を一にしている。
※3.甲の平成29年分の所得金額の合計額は6,000,000円とする。


【答】
(1)医療費控除
(20,000円+30,000円+40,000円)−(注)100,000円=△10,000円⇒0円

(2)医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)
(30,000円+40,000円)−12,000円=58,000円

(3)医療費控除額
(1)か(2)のいずれか大きい方を選択⇒58,000円

このケースでは通常の医療費控除額が0となり、セルフメディケーション税制を適用すると控除額は58,000円となります。(セルフメディケーション税制導入前は医療費控除の適用を受けることはできない。)

また、セルフメディケーション税制も医療費控除と同様、年末調整では所得控除をすることができず、確定申告をすることによって初めて適用することができます。
従って、会社で年末調整をしたからこれで終わりというわけではなく、医療費がある場合には、ご自身で医療費控除(セルフメディケーション税制)の適用を受けることができるかを確認することが必要となります。
そのためにも、病院に通院した領収書や薬局で購入したOTC薬品の領収書を捨てずに残しておくことが大切になってきます。

 因みに、ワンストップ特例制度を利用してふるさと納税をしている方についてはふるさと納税分についても申告をする必要があるため、注意が必要です。


◆ 添付書類の改正点(紙提出の場合)
 従来の医療費控除の適用を受けるためには、領収書などの添付が義務付けられていました。しかし、平成29年分以降につきましては、領収書の提出義務がなくなった代わりに医療費の明細書を記載し、提出することが義務付けられました。
改正が入った部分は下記の通りです。



現在は経過措置期間となるため、平成31年分の確定申告まではこれまでと同様に領収書の添付又は提示でもよいこととされていますが、領収書につきましては5年間の保存が義務付けられておりますので、きっちりと保管しておきましょう!


◆ 各種明細書につきまして
 医療費控除、セルフメディケーション税制の明細書については下記のリンク先の資料をダウンロードして頂ければと思います。
【医療費控除の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref1.pdf
【セルフメディケーション税制の明細書】
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinkoku/shotoku/yoshiki02/pdf/ref2.pdf


◆ 最後に
 平成29年度に子供がお生まれになった方や、医療費や薬代が例年よりもかかった方についてはこれらの制度を利用することで税負担が軽減できるかもしれません。
医療費控除に関わらず確定申告についてお悩みの方は中嶌会計事務所まで是非是非ご相談ください!