今回のテーマは非上場株式(取引相場の無い株式)の評価の改正論点についてです。
平成29年1月1日より、非上場株式の評価方法に改正のメスが入りました。
この改正によりあなたの会社の株が安くなる?高くなる?
事業承継をお考えの社長さん、相続税・贈与税対策は万全ですか?
是非この機会に見直しを!

◆非上場株式の評価方法
 非上場株式は上場株式に比べ、市場のような客観性がないことから、会社の規模に応じて「類似業種比準価額」と「純資産価額」を組み合わせて株価の計算を行うこととなっていますが、今回改正が入ったのは類似業種比準価額の計算方法です。
類似業種比準価額とは?
 →簡単に言うと、「上場している会社と比較して計算した株価」です。
  
 具体的な計算方法は、まず今評価しようとしている会社と同じ業種の上場株式の株価(A)をベースとし、そこに上場株式との配当(B)・利益(C)・純資産(D)の比較割合を乗じて計算します。
 
類似業種比準価額の計算のイメージ(※金額・数値は仮定のものとする。)
〈類似業種の上場会社(X社)〉
A(株価)…500円
B(配当)…10
C(利益)…20
D(純資産)…40

〈評価したい非上場会社(Y社)〉
株価…?円
b(配当)…5
c(利益)…10  
d(純資産)…20 
 
 今、株の評価をしたい非上場会社をY社とし、そのY社と類似業種の上場会社をX社とします。
Y社の株式を評価するにはX社の株価(500円)をベースとし、配当・利益・純資産の比較割合を乗じて計算します。
ここで、X社とY社の配当・利益・純資産の要素を見比べてみてください。
Y社の配当・利益・純資産の要素はX社の要素のちょうど半分(比較割合50%)ですね!
従って、Y社の株価は「500円×比較割合50%=250円」
これがざっくりとした評価のイメージです。

類似業種比準価額の算式
 少し踏み込んで行きましょう!
類似業種比準価額の算定について、具体的にどんな算式を組むかというと…

となります。

因みに先ほどの例で用いたアルファベットが算式のアルファベットと対応しているので、算式に入れてみると…

というような具合です。複雑ですよね。。。

 まとめると、( )書きの算式が上場会社との比較割合を算出する部分で、今回の例では比較割合がちょうど50%となるため、上場会社の類似業種の株価(500円)の半分(250円)になった。というわけです。

 お待たせいたしました。
ここまで話してやっと改正の話ができるのですが、改正が入った所はズバリ!先ほどの算式のA(株価)の部分と比較割合の算式なのです。
◆改正論点@
 まずはA(株価)の部分からいきましょう。
Aは上場会社の類似業種の株価ですが、改正による変更点は以下の通りです。
〈H28.12/31までの相続・贈与〉
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価
→上記のうちいずれか少ない金額
〈H29.1/1以降の相続・贈与〉
・課税時期の属する月以前3ヶ月間の各月の類似業種の株価のうち最も低いもの
・類似業種の前年平均株価
・課税時期の属する月以前2年間平均
→上記のうちいずれか少ない金額
このことにより、類似業種の株価が短期間に高騰するようなことがあっても、より平準化した株価を選択できるようになりました。

◆改正論点A
 そして改正論点の二つ目は先ほどの比較割合の算式です。
どこがどう変わったのでしょうか?
まずは先ほどの改正前の比較割合の算式をご覧頂きたいのですが、よくよく算式の分子を眺めてみると、Cの要素(利益)の部分だけ3倍されていますよね。
これはなぜかというと、「会社の株価の算定に当たってはその会社の利益(もうけ)が多分に影響しているはずだ。だから重要性の高いC(利益)の要素については他の要素よりも3倍のウエイトをかけよう!」というわけなんですね。
従って改正前の各要素の割合はB(配当)が@、C(利益)がB、D(純資産)が@となり、1:3:1(合計の5が分母)となっていました。
ところが、今回の改正により平成29年1月1日以降、各要素のウエイトが見直され、B(配当)が@、C(利益)が@、D(純資産)が@となり、1:1:1(分母は3)に変更となりました。


イメージ的には利益の要素が減った分、株価が安くなるような感覚ですね。
改正の背景としては好業績企業の負担を軽くしようという狙いがあるそうですが、利益の金額によっては逆に株価が上がってしまうこともあるようなので、気になる方は株価の試算をご依頼頂ければと思います。

◆最後に
 今回は非常にマニアックな内容になってしまってすみません!
しかし、事業承継等をお考えの方については、非上場株式とはいえその価額は非常に多額となり、相続税・贈与税の対策は必須です!
この他にも改正された論点などもありますので、気になる方は中嶌会計まで是非お気軽にお問い合わせくださいね!